「おばけのたまご」 木村研
けんとくんは、おまつりの屋台で、おばけのたまごを買いました。
「へん。おばけのたまごなんてあるもんか」
おにいちゃんがわらいました。
「あるよ」
けんとくんは、ポケットからたまごをとりだして、とくいそうにいいました。
「そうね。夢があっていいわね」
と、お母さんがいいました。
「ほんとに、おばけのたまごなんだって」
けんとくんがおこると、
「わかった、わかった。ほんとうにおばけのたまごなら大発見になるからな。がんばれ」
と、お父さんも笑いながらがいいました。
だあれも信じてくれません。
けんとくんは、ぷんぷんおこってうちに帰ると、さっさと部屋にもどって、おばけのたまごをだいて布団にもぐりこんでしまいました。
真夜中のことです。
「けんとくん、けんとくん」
と、だれかがよんでいます。
目を開けると、まくらもとで、丸いものがボーっと光っています、
「だあれ?」
けんとくんがきくと、
「ぼく。おばけ。今うまれたところだよ」
と、いいました。
「わあー。やっぱりおばけのたまごだったんだ」
けんとくんは、うれしくなりました。
それなのに、おばけの子どもは、
「近ごろ、なかなかおばけのたまごを育ててくれる人がいなくてねえ」
といって、ふんわり ふわふわ、表のほうにとんでいってしまいました。
(作者のことば)
みんなも、おばけの卵をみつけたらやさしく育ててね。きっと素敵な友達になれると思うよ。
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