「ツノがはえた」 はらまさかず

 マイちゃんは、お母さんの言うことをぜんぜんききません。
 「そんなに言うことをきかないと、ツノがはえてきちゃうぞ」
と、お母さんに言われても、へっちゃらです。
 でも、ある日ほんとうに、小さなツノが一本、頭からニョッキリ生えてきました。それだけではありません、口からはキバがのびてきたし、目の白いところは黄色くなって、ぎらぎら光るようになりました。
 それでも、マイちゃんは平気。
 ツノでふすまを突きやぶったり、キバで柱にかみついたりと、前よりも元気です。お母さんは、もうお手上げ。
 すると、急に空が暗くなり、ピカッと光って、どどどーんと雷が落ちました。そして、
 ピンポーン
 玄関のチャイムがなったのです。
 「はーい」お母さんがドアをあけると、そこには、大きな赤鬼が立っていました。
 「小鬼はいるかい?」
 赤鬼はがらがら声でききました。
 マイちゃんは、サッとお母さんの後ろにかくれます。
 「あ、みつけたぞ。」
 赤鬼は、マイちゃんの手をつかみました。
 「いやだ、いやだ。」
 マイちゃんは泣きましたが、赤鬼は手をはなしてくれません。
 「じゃあ、あと十日たって、ツノがなくなってたらゆるしてやる」
 赤鬼はそう言うと、帰っていきました。
 それから、マイちゃんはお母さんの言うことを、今までよりはきくようになりました。すると、だんだん、ツノとキバが小さくなっていき、もとにもどりました。
 「なんだか、ものたりないな」
 マイちゃんは、頭をかきながらいいました。

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