「あいにきた友だち」 木村研

 冬休み、りりかちゃんは、お父さんとお母さんといっしょにスキーに行きました。
 りりかちゃんは、年長さんです。だから、まだ上手にすべれません。駐車場のわきで遊んでいると、葉っぱがのぞいていました。
手を伸ばすと、葉っぱにとげがありました。
「いたい」
「それ、たんぽぽの葉っぱよ。春になったら、きれいな花を咲かせるのよ」
おかあさんが教えてくれました。
「じゃあ、春になったら、また会いにこようね」
 そういって、りりかちゃんは、おとうさんの車で帰って行きました。

 ところが、まもなく日本中にコロナウイルスの感染が広がって、幼稚園の卒園式も小学校の入学式もできませんでした。
 五月になるのに、まだ一度も学校にも行っていません。
「つまんないの」
 りりかちゃんは、雨の日も風の日もランドセルをせおって、窓の外をみていました。
 そんなある日、いい天気になりました。
「わー。いい気持ち」
りりかちゃんがベランダに出ていくと、
「おーい」
と、わたげたちが飛んできました。
 わたげたちは、風にのって、高くたかくとんでいきます。
 それなのに、一番小さなわたげが、
「りりかちゃんが会いに来てくれないから、ぼくたち、わたげになったんだよ」
といって、ベランダにおりてきました。
「えっ。会いに来てくれたの。ありがとう」
 自粛で学校がお休みの間、りりかちゃんは、ベランダでわたげと一緒に学校ごっこをしてあそびました。

(作者のことば)
たんぽぽのわたげが、りりかちゃんのうちのベランダの鉢できれいな花を咲かすのはいつのことでしょうね?

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