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「雨くらげ」 はらまさかず

沼水さんのこと、覚えていますか?
そうそう、あの人工クラゲの研究をしている。
沼水さんは、あいかわらず、研究の毎日です。
また、新しい発明をして実験をするというので、ぼくは呼び出されてきたのです。こんな大雨の日に…。

「じゃあ、いくよ」
沼水さんはそう言って、手をひらきました。
手のなかには、小さなくらげがたくさん。
手をひらくと同時に、空にむかってゆらゆら飛んでいきます。
くらげたちは雨にうたれ、少しずつ少しずつ、大きくなっていくように見えます。
「あれ?」
雨が小雨になりました。
いえ、そうじゃありません。
くらげたちが雨を吸うので、小雨になったように感じるのです。その証拠に、西の空は激しい雨のままです。
くらげたちは、どんどんどんどん大きくなり東へ向かいます。
「このあと、くらげたちはどうなるの?」
ぼくは、ききました。
「海に到達して、そうだなあ一時間ほどしたらとけてなくなる」
沼水さんはわらっていいました。
実験は成功です。
僕たちは雨にぬれ、くらげたちを見送りました。

「水をいっぱいにしたくらげたちを、砂漠までつれていけたらなあ」
沼水さんがいいました。
沼水さんは、また新しい夢に向かって、動き始めました。

沼水さんのお話は、このほかに5話あります。
#沼水さんで検索できます。

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