「ぼくのとくいなこと」 はらまさかず

 ぼっくんは、運動が苦手。本を読むのも好きじゃない。得意なことがなんにもない。あ、一つだけあった。それは、小さなトゲをじょうずに抜くこと。
 「ぼっくん、ゆびにトゲが刺さった。ぬいてくれないか」
 「はーい」
 おじいさんには、見えない小さなトゲを、ぼっくんは簡単に抜きました。
 「ぼっくんは、すごいなあ。目がいいし、手も器用だなあ」
おじいさんが、ほめてくれました。
 ぼっくんは、おじいさんだけでなく、おばあさんやお母さん、お父さんのトゲも抜いてあげます。ぼっくんがトゲを抜くのが上手ということは、だんだん、みんなに知られていきました。そして、ある日のこと。
 ピンポーンと、玄関のチャイムがなりました。
 お母さんがドアをあけると、そこには、大きな竜がいます。
 竜はキバだらけの口をあけ、
「ぼっくんに、トゲを抜いてほしいんです」
といいました。
 ぼっくんは走ってくると、たちまち、竜の首のうしろに小さなトゲを見つけ、すぐに抜いてやりました。
「ああ、ありがとう。たすかった」
 竜は、かわりにぼっくんを背中に乗せて、空を飛んでくれました。

(作者のことば)
どんな小さなことでも、自分にしかできないことを見つけたら、世界中から、たくさんの人が会いにきてくれるよ。

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