「お母さんの自転車」 はらまさかず

 トモちゃんは、お母さんの自転車の後ろに乗るのが大好きです。
 「トモが大きくなったら、この自転車ちょうだいね」
 トモちゃんがいいました。
 「もっといいの買ってあげるわよ」
 お母さんは、わらっていいました。
 カンカンカンカン
 電車のふみきりです。
 「今日は、つかまっちゃったねえ」
 お母さんがいいました。
 「しかたないね」
 トモちゃんがいいました。
 カンカンカンカン
 それにしても、今日はぜんぜん、ふみきりがあきません。いくら待ってもだめです。
 「とうとう、このボタンを押す日が来たわ」
 お母さんはそういうと、ハンドルについている赤いボタンを押しました。すると、自転車から長い棒がスーッとのびて、大きなプロペラが出てきました。まるで、ヘリコプターみたい。
 ブンブンブンブン
 自転車をこぐと、プロペラがまわります。
 「トモちゃんも手伝って」
 すると、トモちゃんにも、ペダルがウィーンと出てきました。
 「せーの。」
 お母さんとトモちゃんは、いっしょうけんめい自転車をこぎました。
 ブンブンブンブン
 自転車が、ふわっと浮かびます。そして、空高く舞い上がると、踏切をこえて飛んでいきました。
 二人は、風に乗り、ぐんぐん飛んでいきます。
 「ねえ、お母さん、ほんとにほんとに、この自転車ちょうだいねえ」
 トモちゃんは、お母さんにぎゅっとしがみついていいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?