見出し画像

ナミビア料理は日本料理? 料理に国境はない


コロナウイルスの影響で、日本各地で自宅待機・自粛モードになった2020年春。「ステイホームの今だからこそできること、ないかな?」と本棚を眺めていたら……「あ、料理本。しかも英語の」旅行した先の土地の料理本を試しに買ってみたり、海外の友達に自国の料理本をプレゼントされたり。その結果、書棚には英語の料理本が数冊。手に入れた時はワクワクするが、なかなか作る気になれない。海外の料理本は写真やイラストが少なく、文字だけのものが多いのだ。普段なかなか開いて作ってみようとは思わない、海外の料理本。この際挑戦してみようかな……。

中でも、ちょっと中身が想像もつかない「ナミビア料理本」を選んでみた。ナミビアはアフリカ大陸の「左下」、南アフリカの左上にある。学生時代に3ヶ月、夏のインターンシップでお世話になった国。かれこれ20年も前になるなあ。タイトルは「ナミビアEXPO 98 魚とシーフード料理」ん?ナミビアって魚食べる国だっけ? 確かに大西洋には面しているけど、滞在した時は、お肉メインの国だったイメージが。みんなチキンの焼いたの食べていた気がする。私は「せっかくだから」と滞在中にシマウマやダチョウをレストランで注文して食べた思い出が。

イントロを読んでみると「ナミビアは世界でも魚の消費量が少ない国です。魚の消費を増やすために、国を挙げてシーフード料理のレシピコンテスをしました」とのこと。中身を見てみると、どうやら地域ごとにコンテストをして、勝ち残ったレシピを集めたものらしい。本の中身は、カテゴリーも前菜、スープ、カジュアルからおもてなし料理まで多彩だ。

私は、料理は苦にはならないけど、大好きというほどでもない。冷蔵庫を開けて、その日にある材料で「何が作れるかな」とクックパッドを検索、パパっと作るタイプだ。きっとこのナミビア料理本は、物珍しさで買ったのだろう。魚料理で手の込んだものは避けたい。家族で食べられる、夕食系のレシピから何か作ってみよう。

「サバのマスタード焼き」まずはバターをかけながらフライパンで焼く。マスタードと刻んだパセリを混ぜてソースを作ったら、サバに絡めて魚焼きグリルでこんがり。濃厚でおいしい。うん、サバは裏切らない。
「たらのクリームソース焼き」こちらもバターをかけて焼けと。バター少なめにしよう。牛乳とバターを混ぜて作ったクリームの味がいまいち。コンソメなしで、レモンをたらしたら、余計にコクがなくてすっぱい、不思議なバタークリームみたいな味がする。
「かじきのレモングリル」オリーブオイル、レモンと塩コショウで下味をつけ、ローリエで香りをつけたグリルはさっぱりした味わい。何ならポン酢を添えるとさらに合う。
「離婚記念日のスープ」謎のタイトルだ。トマトスープにグリーンピーススープ、牛乳とカニのほぐし缶を合わせただけの簡単スープ。でも、味わいはホテルで出される高級スープみたい。披露宴のディナーで出てくるスープを連想させる味だ。ひょっとして、離婚記念日に、結婚した時に飲んだスープをしみじみ思い出しながら飲む、という設定なのか。それなりに美味しかったけど、家族から「おかわり!」の声はなかった。

こうして作ってみると、どのレシピも、正直「アフリカっぽい」はたまた「ナミビアっぽい」感じはしない。レシピの中には「魚のカレー」や、「シーフードのトマト煮」もあった。前菜は「エビとアボカドのサラダ」も。

夫曰く「魚料理が定着していない国のレシピなんだから、つまりはアレンジ料理なんじゃないか? 昔から魚を食べていた国なら伝統的なレシピがあるだろ。例えば、日本やタイの魚醤みたいに……」おっしゃる通り。レシピを見ながら作る魚料理は、どれも洋風のアレンジ料理に近いもの。私のナミビア料理も、バターが多すぎるから減らし、クリームなしで牛乳で十分、と徐々に日本式のアレンジになっていった。

そんなある日、テレビを見ていたら「世界の日本料理」という番組が。なんとナミビアでも、日本料理店が取材を受けてる! 20年前はナミビアに日本料理店なんかなかったなあ、としばし感慨深い思いに浸った。ワクワクしながらテレビをつけると衝撃のメニューが。日本料理に馴染みのないナミビアで受け入れてもらおうと、ポルトガル人オーナーがいろいろ工夫を凝らしていた。巻き寿司を列車の形に並べ、オーロラソースをかけた「オリエンタルエクスプレス」。ピザの形状に寿司をアレンジした「ピザ寿司」。日本人もびっくりの日本料理だ。

「日本の家庭料理は幅が広い。日本人は家庭でイタリア料理も、中華料理も、タイ料理も、メキシコ料理も作ってしまう。日本の食卓は国際色豊かだ」といわれる話を思い出した。でもそれは日本だけの話ではなく、スーパーで色々な食材・調味料が手に入れば、料理が好きなご家庭では、世界中に国際色豊かな食卓があるのだろう。どうやら私が日本で作ったナミビア料理と、ナミビアのレストランで出される日本料理にほとんど差はなさそうだ。

料理本のイントロをもう一度読み返してみた。「応募が数多く、この本に載っている全てのレシピをコンテストで再現したわけではありません。作ってみた読者は、ぜひ感想をお寄せ下さい」とのこと。宛先はナミビアの農林水産省にあたる省庁だ。せっかくだから、作った感想と、私の一押しを推薦してみようか。「かじきのレモングリルは日本人好みの味です。ポン酢、つまりシトラス風味のソイソースを添えたら、爽やかで暑い日でも食べやすいです。ぜひナミビアの日本料理店で提供してみてはいかがでしょうか?」もうどっちがどっちだか分からない!?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?