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白光

 考えないようにと考えつづけている時間は、鋭い痛みこそなくても、夏の厳しい白光には似ていて、肌を炙る熱と腕を引っ張り合うように、具合の悪い冷汗を私にかかせる。人の思惑という所在も覚束ない家の様子を気にして、いややはり気にするのは止めようと背を向けたところで、格好だけは堂々と前を睨んでみせても、実際後ろの窓から漏れる話し声に、聞き耳をたてずにはいられないものだ。
「地球のほとんどは海に埋まっている。故に悲しみよりも喜びが多いなどという人は、真実の人間ではない」と、イシュメールは言う。つまらない意地と見栄のために勉強を怠り、オールの漕ぎ方も知らないまま海に放たれてしまった、可哀想な船乗の心細さを、私はきっと知っている。

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