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偽物の瞬き、炎、暗闇の温もり

踏みしめていた色とりどりの枯葉が赤黒く朽ちていく。
きりきりと肌に刺さるような空気と、同情のような優しさの陽の光。
閑散とした季節の中で、幻惑みたいな雪が降る。
一番人が多く死ぬ季節。

何も変わらないね、なんて自嘲気味に呟く。
たくさんのものを、人を、環境を変えて、必要なものを揃えて、もう二度とあの場所に戻ることがないようにと思っていた。
そうやって自分も変えられたとどこか錯覚していた。
でもそうじゃないよ。そうじゃないよね。
生きていくのに必要なのはいつだって、お金と、住処と、抱え切れないほどの孤独と、それを塗り潰すための自尊心だ。

死んだ動物の腹の中みたいな部屋の温もり。
電気ストーブの赤さだけが暗闇を照らす、まるで心臓みたいに。

空っぽのままで、虚勢を張って、そうやって人間のふりをしている。
産まれた瞬間から死に向かっている生き物たち。
自我の終わりは怖くて、でもきっとその時がきたら受け入れるんだろう。
惰性で生きることは悪いことじゃない。小さな灯火を吹き消さないようにそっと守り続けること。

幸せになんかならなくていい。
そう思っていることが一番の幸せだ。


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