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くだらない一日と夜、バターの香り

疲弊した夜は満足感があるというより、なんだか絶望的だ。この世界の知らないどこかに隕石が落ちていくような感覚があって、宛てもなく手を伸ばすように何かに縋ってしまう。ベッドに潜るのが唯一の正解だと、押しのけられた理性が唱えている。
ぼんやりと、人が話しているのを流している。内容は頭に入ってこないけれど、ゆったりと喋る様子には安心感を覚える。カーテンに閉ざされた窓の向こうで、今日も星が街灯りにかき消されている。人為的な光は雲を照らし、闇は中途半端な濁りのまま、誤魔化すように宙を漂っている。朝はまだ遠い。

近々引越しをするので、最近は荷物の片付けをしている。片付けなどは深夜の方が捗るように思う。試験勉強中に掃除をしたくなるのは、そういった要因もあるのかもしれない。
物は捨ててしまえば二度とは戻ってこなくて、なんとなく怖い気持ちがあった。けれど、捨てたほうがいい執着もあるなと最近は感じる。取っておいたところで変化を止められるわけではないし、変化そのものは自然なことだ。小さな執着でも、積もれば少しずつ苦しくなっていく。こだわりで周りが見えなくなるより、ちょうどいい距離の方が楽に付き合っていける。

最近、昔からの友人が結婚する予定なのだと教えてくれた。祝福や、幸せを願う気持ちの傍らに、一抹の寂しさもあった。皆が少しずつ「大人」になっていくのだろう。私も私が目指す形の「大人」に近づいていたい。
人間関係には連続性があるけれど、脆さや儚さも孕んでいる。友人が大事なものを大事にできるように、自分も大事なものを大事にして、尊重し合える場所にいたいと願う。

ずっと、仕事とは無関係なプライベートで、何か表現したいという気持ちがある。特別なものでなくていい。自分があとで見返して、ちょっといいなと思えるものがいい。日記もその一つではあるけれど。
少し凝った、何か完成できるものがあるといいなと思う。小さな目標はとても有益だ。

無関係だけれど、クッキーが焼きたい。シンプルなやつでいい。オーブンからバターの香りがするのが好きだから。
脂質は一グラム九キロカロリーだから美味しいんだ、と誰かが言っていた。あれは合理的な香りなのだ。


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