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「委員会」と「本会議」、何が違うの? #25歳からの国会

僅かな審議においても、新たな重大問題が次々と明らかになっています。こうした国民の懸念、批判に真摯に向き合い、問題を究明する徹底した審議こそ、参議院に求められている責務であります。
そして、この徹底した審議を支える柱が委員会中心主義であります。戦前の本会議中心主義に対して、新憲法下の新しい国会は、その運営について委員会中心主義を採用いたしました。より突っ込んで、より充実した審議をすることを目的としているのが委員会中心主義であります。中間報告の濫用は、その新しい国会の柱を乱暴に破壊するものと言わなければなりません。

山下芳生参院議員
平成29年6月14日 参議院本会議

予算委員会や外交防衛委員会、議院運営委員会に内閣委員会。テレビなどでも度々聞くこの単語ですが、そもそも「委員会」とは何で、「本会議」と何なのか、ご存知でしょうか。

委員会とは
10〰45人程度で組織される審査機関。実際に本会議で審査される前に、それぞれの委員会に専門性を持った議員が配属され、集中的に審査を行う。
委員会には常任委員会と特別委員会があり、常任委員会は衆参共に17の委員会が存在する。
なお、詳細は衆参で若干の違いが有り、例えば衆議院は外務委員会と安全保障委員会と分かれているのに対し、参議院では外交防衛委員会という名称で一つにまとめられている。
特別委員会は、東日本大震災特別委員会など、その時々で重要なテーマを持った委員会が組織されることがある。
本会議とは
最終的に法案が採決される場所。代表質問や所信表明など、政府や野党党首が全員の前で演説する際や、議会の開会閉会も本会議で行われる。
ただし、実質的な審議はほとんどが委員会で行われるため、本会議は人が集まるだけ集まって話しているのは一人だけ、という事が多い。
議員が大勢集まって野次を飛ばしていたり、居眠りしていたりするのがテレビで放送されることも。

法律ができるまで

この委員会、本会議を経て、法案がどのように出来るのかをご紹介します。法律は、下記のようなプロセスを経て決まります。

1.法案提出
法案は、内閣、衆議院・参議院の国会議員、または委員会が提出できます。国会議員、または委員会で提出する議員立法は、衆議院で20名、参議院で10名の議員の賛成が必要です(予算を伴う場合は衆議院で50名、参議院で20名が必要になります)。
2.委員会付託
提出された法案は議院運営委員会(通称・議運)に付託され、ここで、提出された法案がどの委員会で審議されるか決定されます。
ただし、野党提出の議員立法は審議する委員会が、政府に対抗する目的であることがほとんどであるため、ほとんどのケースで審議する委員会も決まらないまま「つるし」にかけられます(法案が委員会で審議入りされないまま棚晒しになること)。
3.趣旨説明(委員会)
無事審議入りした法案は、委員会で趣旨説明が行われます。これは、法案提出者が法案の趣旨を述べるもので、内閣提出法案であれば担当大臣、議員立法であれば提出議員の誰か、ということになります。
4.質疑(委員会)
趣旨説明の後、国会の最大の見せ場とも言える委員会での質疑が行われます。提出者や大臣、副大臣、大臣政務官の政務三役に委員会の委員(議員)が質問する他、参考人を招致して専門的な知見をヒアリングしたり、関係者に対して質問を行う公聴会をセットしたりします。
質疑終了後、修正を希望する委員がいる場合は修正案の提出が可能です。
5.討論(委員会)
質疑後に、討論を行います。通常、会派ごとに賛成・反対の意見を述べていきます。討論の際には、「賛成の立場から討論します」「反対の立場から討論します」と、立場を明らかにした後に、理由を述べることになっています。
また、修正案が提出されている場合は、合わせて討論が行われます。
6.採決(委員会)
討論終了後、採決が行われます。審議状況によっては、「まだ審議が充分になされていない」として、採決に反対する議員が退席することもあります。
採決がなされると、法案は本会議に上程されます。
また、法案を修正しないが、委員会の意思としてなんらかの決議を行いたい場合は「附帯決議」が可決されることもあります。
例えば、内閣提出法案で、国民の間に大きな反対論があるケースなどでは、附帯決議で一定のバランスを取ることがあります(ただし、拘束力はありません)。

会期末までに法案が採決されず、本会議で審議されないと、審議を継続するかどうかを議決し、審議継続しない場合は審議未了で廃案となります。
7.委員長報告(本会議)
本会議に上程された法案は、まず可決した(審査を担当した)委員会からの委員長報告を受けます。委員会での質疑内容や、附帯決議がある場合はその内容などが説明されます。
8.討論(本会議)
委員会と同様、賛成・反対の立場から意見表明を行います。ただし、全会一致のものなどは討論の申し出なくそのまま採決になることもあります。
9.採決(本会議)
討論の後、採決を行います。
採決に関しては、与野党で合意している場合は「異議なし」と発生するのみで採決することがほとんどです。
与野党で賛否が分かれる場合、衆議院は起立採決(起立者を目で確認。細かい数は残らない)や記名採決(賛否をひとりひとり書き込む)、参議院は押しボタン式での採決にて賛否が集計されます。
衆議院では起立採決が主流ですが(時間がかからないため)、与野党で拮抗していたり造反者が出ることが明らかな場合は記名採決になります。

ちなみに、内閣不信任案などは記名投票が原則です。
10.参(衆)議院に送る・回付
衆議院・参議院で成立した法案は、もう一つの議院に送られます。両院で同じプロセスを行い、そのまま可決された場合は法案成立となります。
また、別院で修正議決が行われた場合は再度先に審議された院に送られ(これを回付と呼びます)、これを可決されれば、修正議決のまま可決します。
両院で議決が一致しない場合は両院協議会が開かれ、出席議員の3分の2が議案を賛成すれば成案として可決となります。

両院協議会で一致しない場合、「予算・条約・内閣総理大臣の指名・法律案の議決」など多くの点で衆議院の優越が憲法上規定されているため、通常は衆議院での結果がそのまま反映されることになります。
11.奏上
最終的に、最後に審議された議会の議長から内閣を通して天皇に法案が送られ(奏上)、その日から30日以内に公布されることとなっています。
法律案は、公布が閣議決定された後官報に記載され、正式に公布となります。

委員会中心主義と本会議中心主義

議会の運営手法には、大きく分けて本会議中心主義と委員会中心主義があります。

本会議中心主義
イギリスなど見られるように、与党と野党が全面対決するいわゆる「アリーナ型」の議会で多く見られる。
委員会中心主義
アメリカなど与党と野党という軸ではなく、立法府と行政府が互いに牽制し合いながら、委員会で法案を変換していく「変換型」議会に多く見られる。

戦前の日本は同じ立憲君主制を取るイギリス議会を参考に「三読会」制度を取る、本会議中心主義でした。

戦後日本は、議会制度を戦前と全く異なるものに変更しましたが、アメリカ型議会を参考にした、委員会中心主義となりました。

委員会中心主義の特徴とは

委員会中心主義の国においては、実質的な審議は委員会で行われることとなり、委員会には専門的な議員が所属し、本会議よりも少数の人数で行われます。

委員会中心主義の議会では委員長の権限が強く、中立であることが求められています(アメリカでこの傾向は顕著です)。また、委員長は与党の議員がなるとも限らず、野党議員が委員長になることもあります。


とはいえ、与党の議員が党を離脱するわけではないため、与党の委員長職は入閣までのステップ、かつ与党よりの差配になることが多いのも現実です。

衆議院の予算委員会委員長は閣僚級のポストです。与野党が激突するだけに、予算委員会委員長の仕切りによって国会が大きく変わるほどの影響力があります。

法案が最後に決まるのは「本会議」ですが、「委員会」を知ることは、国会を知ることと同じです。各委員会の特徴などを知れば、更に国会がよくわかるのではないでしょうか。

参考資料

衆議院「国会について」
参議院「国会のしくみと法律ができるまで!」

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