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国会を開くのに「一日三億円かかる」って本当? #25歳からの国会

国民の皆さん、だまされてはいけません。この間、審議拒否をしているのは政府・与党の皆さんです。
昨年も、憲法五十三条の規定に基づき、野党が臨時国会の開催を要求しました。しかし、六月下旬から九月二十七日まで、そのことを拒み続けたのは政府です。そして、九月二十八日、やっと臨時国会が召集されたと思ったら、一切の審議もせずに解散です。これが究極の審議拒否ではありませんか。
ことしの通常国会もそうです。五月下旬以降、繰り返し予算委員会の集中審議を求めてきました。しかし、与党は、それには全く応じようとはしませんでした。

逢坂誠二衆院議員
平成30年11月20日 衆議院本会議

冒頭、憲法53条に基づく開催要求についての本会議質問を引用しました。さて、度々「国会は一日三億円かかる」と言われます。これは、どういった数字に基づいた意見なのでしょうか?

一日三億円?

日経新聞によれば 、「衆参両院の要求ベースの予算は、衆院が666億7254万円、参院は413億8903万円で、合計1080億6157万円にのぼる。これを365日で割ると、1日あたりの費用は2億9606万円となる」とあります。
これは、大きく下記のようなものを含んでいます。

• 国会議員への歳費
• 議員秘書への手当
• 議員旅費や文書交通管理費

要は、国会に関わる費用を全てまとめて、日割りすると大体1日3億円になる、ということです。憲法53条に基づく臨時国会開催要求がなされている際に「1日3億円かかるから臨時国会は開かなくていい」という発言をされた方がいましたが、これは完全に誤りです。臨時国会を開こうが開くまいが、議員歳費は変わりません。

むしろ「日割り」なら、国会に出てきてもらって働いてもらったほうが、一日あたりの歳費はやすくなります。

議員を減らすことが本当に正しいのか?

さて、この一日三億円という金額をどう考えればいいのでしょう。重要なことは、民主主義にはコストが掛かるということです。だからこそ、国会運営を通してより良い国家を作り出す必要があります。

議員報酬や議員定数というと、常に削減ばかりが叫ばれますが、本当に議員を減らすことが正しいのでしょうか?

日本の人口100万人あたりの議員数は5.65人で、諸外国に比べて極端に多いわけではありません 。多ければいい、少なければいいというものではありませんが、あまりに減らせ、減らせの声だけが声高に叫ばれるのは危険です。

地方議員2万人を対象にしたアンケート でも、6割以上が議員定数をへらすことに反対で、「無投票になると定数を減らす傾向であるが、それで当選の票数が上がるのであれば、ますます普通の若者は出られなくなり、ベテランと地域のボスしか当選しなくなると思う」の意見もありました。

広く国民の声を聞くためには、一定の議員の数が必要であることは間違いありません。しかし、国民が国会に対して価値を感じていない状況では割高に感じてしまうのもまた、当然だと思います。

国会議員の歳費

国会議員の給与は、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(歳費法)」で、議長・副議長・議員の職に応じてそれぞれ決まっています。

議長  月額217万円 = 年額2604万円
副議長 月額158万4000円 = 年額1900万8000円
議員  月額129万4000円 = 年額1552万8000円

また、期末手当が年二回支給されます。

期末手当 各319万円(年2回で、年額638万円)

その他、国会法38条に定義される文書通信交通滞在費が月額100万円、年額1200万円支給されます。

これだけを見ると、一般の会社員などと比べて国会議員の歳費は非常に高いものに感じるかもしれません。

議員の暮らしとは?

では、歳費を確認したところで視点を変えて、国会議員の生活について考えてみましょう。国会議員は「儲かる仕事」なのでしょうか?

現在は議会に返り咲き、立憲民主党に所属する山内康一議員が、2015年に落選した際にこのようなインタビューを受けています。

選挙が強くて後援会がしっかりしていて、政治資金パーティーやっている人達は、文書交通費とかまで含めて全部が遊ぶ金になる。
でも僕は文書交通費とかはちゃんと事務所のお金として使っている。自民党の時代は年に130回くらいお通夜に出ていたんです。

香典だけで1回5000円として65万はかかる。それから新年会と忘年会合わせて100カ所くらい出る。会費5000円ずつとしても50万くらいはかかる。
自民党時代は、毎年地元の市会議員に餅代みたいなのを出していた。お金が欲しかったら、最初から外資系の金融機関なんかをめざした方がいいと思います。

HUFFPOST「『お金が欲しいなら他の仕事がいい』落選した国会議員が見た政界」2015年02月12日

国会議員の方の生活は様々ですが、山内議員が語るように、必ずしも裕福と言えない議員が多いのも確かです。

公費で雇える秘書だけで賄える方は少なく、地元や永田町に私設秘書を抱えるのが普通ですし、事務所代も払います。

そもそも、選挙にはお金がかかります。ポスター代、選挙カー……。党から総支部長費などとして支給されるケースもありますが、それだけでは賄えないケースも多々あります。

しかも、大野伴睦元衆議院議長の名言「猿は木から落ちても猿だが、議員が選挙で落ちれば、ただの人だ」にあるように、議員は一度落ちてしまえば収入も名誉もゼロになります。

井脇ノブ子議員のように、落選後長くかかって借金を返す方もいるようです。

いまの収入は国民年金が毎月7万8000円。そこから毎月3万円だけ払って、(元支援者の)部屋に住ませてもろうとんねん。選挙は何回も出たけど、費用は全部自己負担やった。ポスター代や宣伝カーのガス代といった借金の返済が、やっと来年の3月ごろ終わるのよ。

現代ビジネス「『おカネまったくないねん…』井脇ノブ子が貧困を告白!」

国会議員の歳費はどうあるべきか

国会議員の歳費の問題は、たびたび国会でも取り上げられています。令和2年には安倍晋三総理大臣がこのように答弁しています。

政治に要する費用の問題は、議会政治や議員活動のあり方、すなわち民主主義の根幹にかかわる重要な課題であることから、国会において国民の代表たる国会議員が真摯な議論を通じて合意を得る努力を重ねていかなければならない問題であると考えています。

令和2年4月27日 衆議院本会議 安倍晋三総理大臣

国民の代表たる国会議員がその歳費に見合った仕事をしているかどうかは、我々国民一人ひとりが監視していかなければいけない問題だ、ということがわかります。

参考文献

NHK選挙WEB「議員3万2千人大アンケート 全国地方議員アンケート」
THE PAGE「日本の国会議員数、世界で何番目? 世界の国会議員数を比べてみた」

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