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紅茶が知らせる感傷

一年でいちばん愛着を感じる季節がちょうど今頃で、秋がとても好きなのだけれど、いつの頃からか気落ちすることが多くなっていると気がついた。

どうやら日照時間が減ってくることで「季節性うつ」というものが増えてくるというのだけど、そういう現象なんだろうとたいして気にしないでいる。

愛する季節の到来を実感するのは、喫茶店で紅茶をオーダーするようになるからだ。不思議なことに、子どもの時分から「秋は紅茶」と決めてしまっている。あの、こっくりと深い色合いがまさしくオータムカラーそのものであるし、たださらさらとのど越しのよさを楽しんでいた季節から、茶葉の透明感のある芳香や、見つめていると別の世界に飛んでしまいそうになる蠱惑的な色合いなどに心をしっかり留めることができるのが、単純に私に季節の移ろいを知らせるのだ。

真っ青な空が高い。

絹ごしの陽ざしが透明で、肌に感じる風が少しだけ冷たい。

秋の始まりを愛する。とりわけ、都会の秋の孤独を。

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