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カラーが数える春

季節の変わり目に、その気分を象徴するような花を飾るのが好きだ。けれど今年は、毎年のように時期を待ち望んで買っていた好きなミモザすら求めなかった。なんだかそのような気分になれなかった。

出向く必要のある場合と週1日の契約先への出社以外は、基本的にはどこで仕事をしてもいい身の上なので、このような時節柄、できるだけ外出は控えたい。病院へ行かなくてはならず、それを理由に陽気の素晴らしい春の日和に外へ踏み出す。

天気予報では「…残念ながら、陽気のおだやかなのは今日まででしょう」と言っていたけれど、陽の光がいかにもまぶしくプリズムの若々しさである。近所の小学校の桜は早くも満開を迎えており、どんなに不穏な世の中であろうと季節が廻れば花が咲くことにしみじみとありがたさを覚えた。

さすがに病院のあとはまっすぐ帰ろうと思うが、帰宅途中に花屋がある。入ってみると高さのあるカラーが入荷していたので迷わずそれを求めた。このところ、丈の高いままダイナミックに生花を飾るのが気にっており、一本だけわずかに茎をカットするとよいバランスが生まれた。

カラーの花の、楚々とした静けさはなんともいえずよいものだ。清潔感と同時にそこはかとない色香が匂う。

日本中、世界中が試練のような4月を迎えるが、この花のように背筋を伸ばして凛としながら、意識をもって伍していきたいものだ。

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