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老人の葬儀。ー『たびする木馬』ー<8>

穏やかな日常に身を委ねた回転木馬のブランですが、半永久的に姿を留めることができるブランを残し、再会からちょうど10回目の冬の日、優しい老人は息を引き取ります。

実際の原画の色味は少し異なります。

この葬儀の場面、絵を眺めているといろいろ疑問が湧いてきます。

背景にはこれまでになかった藤の花のような花が一面に咲いています。しかし藤の花は日本原産で、ヨーロッパに輸出されているのであるかもしれませんが、季節は冬です。冬に咲く、この藤の花のような満開の花がなんなのか、とても気になります。

それから棺を運ぶ黒服の4人。彼らは誰なのでしょうか。
老人にとっては親しい間柄だったと思われるこの人々は頭からすっぽりと黒いヴェールを被っている様子ですが、中世ヨーロッパでは男性の喪服は礼服とほぼ変わりないため、この4人は女性なのかもしれません。足元の履物も女性のように見えます(最後のひとりは杖をついていますので老人の妻か友人かもしれませんね)。

中世ヨーロッパ(フランス)の葬儀の記録はあまり残っていないようなのでこの場面が判然としませんが、藤の花のような背景とこの黒づくめの4人がとても印象的だなと思うシーンです。
牡丹さんに「どうなのでしょう?」聞くのが一番ですが、あえて謎解きのようなこの一枚を眺めているのも楽しいです。


一方、ブランはすでにメリーゴーランドの仲間たちと離れ離れになっているので、老人が去ったあと、ほんとうに一人ぼっちになりました。

実際の原画の色味は少し異なります。

たのしかったこれまでの思い出をひとつひとつ思い出しながら、倉庫で眠るブラン。ここにも「たまのりひめ」が・・・。

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牡丹靖佳『たびする木馬』(アリス館)絵本原画展
|会期| 2023年8月18日(金)-9月3日(日)
*会期中、8月22日(火)・25日(金)・29日(火)はおやすみ



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