レベル29 ドラゴンクエストが教えてくれたこと

 ずっと、ドラクエで徹夜してみたかった。
小学生のころ、お盆でおばあちゃん家に泊まりに来た、いとこと叔父が、朝までドラクエをしていたような、おぼろげな記憶があったからかもしれない。人生のうちにやりたいことリストに入っていた事柄を、この間私は成し遂げた。
 
 3連休と有休を繋げて5連休にして、ジムや遊びには一切いかず、ただひたすらに、家での時間を楽しむと決めていたとき。3日間はhuluでTRICKと架空OL日記を観てだらだらと過ごし、徐々に見続けるのにも飽きてきた4日目の午後だった。
 
 ドラクエⅥをスマホにダウンロードしてみた。楽しすぎる。
レビューで操作しにくい等の酷評があったので心配していたが、なんだ、全然大丈夫じゃないか。
 
 14時に「さいしょからはじめる」のボタンを押し、ストーリーをどんどん進める。楽しい、止まらない。ふと気が付くとお腹がグーグー鳴っている。そういえば今日一日なにも食べてないな。時計を見ると深夜23時30分。
ドラクエはいつも私をいとも簡単に未来へタイムスリップさせる。
 
 吉野家の牛丼を閉店ギリギリにWoltで注文する。すでにすき家には断られている。お腹はグーグーなっているし、ドラクエをやる手は止まらない、なんとしても栄養補給をしたい。

 注文から数分が経ち、吉野家でオーダーが確定した通知をスマホが鳴らす。こんな深夜にドラクエに夢中になっている29歳独身女性のために、この社会は温かい牛丼と豚汁と温玉を届けてくれる。なんて有難いのだろう。
 
 15分後、インターホンが鳴って届いた牛丼は、今まで食べた牛丼の中で一番おいしかった。ドラクエに夢中になって頬張るほかほかの牛丼、最高。
ベッドに置いた簡易テーブルで牛丼をガツガツかきこみ、あっという間に空になった容器を袋に入れて床に放り投げドラクエの再開。
まだまだ夜は長い。
 
 レベル30ほどになったところだろうか、朝日が昇り、窓の外はすっかり朝の7時過ぎ。言葉では表せない、なんとも言えない達成感を味わい、ずっと入っていなかったお風呂へ。頭皮の脂が二度目のシャンプーでさっぱり綺麗になって、ドライヤーで乾かすと、サラサラ髪になった。
 
 その後布団に入って就寝。ああ、ようやく私はドラクエで完徹したのだ。人生のやりたいことリストを一つ叶えた満足感と共に朝日の昇る都内のマンションの一室で、深い眠りにつくのであった。
 
 ドラクエは、人生においても、結構役立つ情報を教えてくれると思う。
まず、クリアの仕方に人生の進め方が出るような気がする。私は着実に貯金しながら、レベル上げにも時間をかけて、ボスが確実に倒せる状態になってからクリアを目指す。いわばリスクが少ない慎重派。
私の友人はお金をすぐに使って、レベル上げにはなるべく時間をかけずにラスボスに挑む、リスク大の冒険派。その友人は私生活でもその傾向が強い。

 ゲームをどう進めるか一つとってみても、その生きざまは人生にリンクするものがある。
 
 また、レベルの違いでステージが変わるように、20代後半って、なんだか色々と悩んでしまう時期だけど、ドラクエのレベル29に置き換えて考えると、まだまだ中盤じゃん、と気持ちが軽くなる。
はぐれメタルが出始めて、経験値稼ぎも序盤より楽になるし、ルーラは習得済だからどこにでも行けるし、新しい装備を揃えればもっと強くなる。

 もちろん、現実世界のレベル上げの方法やスキルポイントの習得方法はもっと複雑だけれども、人生をゲーム化できたら楽しいだろうなあと思う。
ちなみに、”日本の給料&職業図鑑”という本には、色々な職業がキャラクター化されていて、まるでダーマの神殿のごとく職業が選べるのでオススメだ。
 
 私にとってドラクエは、人生というゲームがつまらない時に、命綱になってくれる存在だけれど、自分の人生をもっと楽しめるようなりたいなあ。

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