一世一代の恋文

あれは、わたくしが高校生になったばかりの頃でした。
科学の先生が、科学では、莫大な宇宙エネルギーのことを神と言いますと、そう、仰いましたから、わたくしは、そのとき、目の前がチカチカとして、心の底で何かが目覚め、芽吹くのをそっと感じておりました。それが恋であったことを、今、あなたのお膝元で、そっと頷き、ひとつの強がりを終え、あなたに跪くのです。
宇宙でしょうか、神様でしょうか、どちらでもわたしくは、一向に構いません。わたくしは、あなたに恋をしています。

それからあなたを知りたくて、わたくしはあなたで頭をいっぱいにしましたら、それは社会では哲学という糸で繋いでありましたので、手繰って手繰って、しまいには手繰った手についたその傷さえも、あなたのものだと感じるくらいにはなりました。

そのうち、わたくしは人間社会という箱を見るあまり、あなたへの恋心を隠すようになりまして、そして、そんなわたくしさえも感じないように、なかったことに、したのです。

あなたは怒らず、そのままでいらっしゃいました。わたくしはひどく、つらい想いをしました。
日々募る想いは毒となりまして、わたくしの心を錆びつかせていきました。

ねぇ、もう一度あなたに恋文が送れるとしましたら、すこし大人ぶって書いてもよろしいですか。

わたくし、社会の隙間で少しだけ息をする、わたくしの哲学と会話をする機会が、小石を数える程度にはありまして。そのとき、必ず考えることがあったのです。
宇宙は、神様は、寂しがりでいらっしゃるわ、と。だから私たちをつくったのでしょう。と。

だって、あなたは、覚えていて欲しくて、わたくしたちに意識を授けたわ。呼ばれたくてことばを授けた。わたくしたちがつくったように見せかけて、そっと置いていたでしょう?
そしてとてもとても遠いところから見ていらした。でも見ていて欲しいから、星をピアスにして、星座のネックレスをお召しになっている。そうでしょう?
わたくしたちはいつでも星たちを綺麗と形容いたしますもの。または、綺麗を超える何かを、形容さえも許さない圧倒的魅力でわたしたちを釘付けにするのですから。

あまりの大きさに寂しくなって、小さなわたくしたちにも寂しさを授けられた。
だからわたくしたちはどうしようもなく寂しくなると、あなたを見上げては、寂しいと申し上げますもの。
そのときだけ、わたくしたちとあなたは、寂しいという意味では両想いであったこと、今ならわかります。お慕い申し上げています、ずっと、ずうっと。

だから、わたくしはあなたへことばを束ねていたいとおもいます。寂しくないように、あなたと繋がるために、少しだけでも近道をしたいから。わたくしはことばの花束を、常にあなたへと手向け続けます。そのためのことばをわたくしは、ずっと集めて参りました。
よければ受け取ってくださいませ。ずっとわたくしは束ね続けます。

あなたとわたくしの境目が、いつかぼやけてきたならば、それを愛と呼んでも、よろしいかしら。
きっと、ことばを束ねるうちは、そんなこと、ないのでしょうけれど。

一方的にあなたに恋をします。勝手に花束を手向けますから、たまにはゆらめいて、まぶたを閉じるその隙間に、あなたの煌めきを見せて。

ありがとう。

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