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我がロマン~高卒野手〜

毎年10月にプロ野球ドラフト会議が開催される。そこで最も注目を浴びると言っても過言ではないのが、上位指名の高卒野手である。その多くは甲子園で観客を沸かせ、注目を浴びてきた選手達である。そんな彼らは18歳という若さでプロ入りし、上の世界へと飛び込んでいく。

タイトルにもあるロマンという言葉、高卒野手にぴったりでは無かろうか?
高卒野手は入団してすぐに2軍3軍できっちり基礎を叩き込まれる。そして下で結果を残し、何年後かに1軍の舞台でプレーする。高校時代のときのように再び大きな注目を浴びる。それから5年、10年とレギュラーを張り、球界を代表する選手へと上り詰める、そんなサクセスストーリーをファンは思い浮かべるのである。

そこで今回は高卒野手に焦点を当てて見ていこう。

規定打席

''36/184''という数字がある。これは何を表しているか分かるだろうか?
2005年以降(2019年は除く)に入団した高卒野手184人の中で、規定打席に到達した選手はたった36人である。およそ19.6%5人に1人ということになる。シビアな世界である。そして、その36人の中にも苦労人が存在する。

まずは高卒野手 規定打席到達 年数ランキングを見てみよう。

坂本は2年目で開幕スタメンを勝ち取り、二岡の負傷もあり、シーズンフル出場を果たした。
森は2年目で指名打者でレギュラーとして1年間プレーして、打撃面で強烈な印象を残した。
ここで注目して欲しいのは4年目までに規定打席に到達した選手達だ。14人ほどいるが、そうそうたる顔ぶれで、ほとんどが今もコアプレーヤーとしてチームを牽引している。
また、遅くブレイクした選手でも活躍している選手がいるのも事実である。

ちなみに、平均を調べてみると5.7年目となっている。高卒野手は即戦力の選手はほとんどいないので、気長に待つのが大切である。

次に高卒野手 規定打席到達 2軍打席数ランキングを見てみよう。

これは1軍で初めて規定打席に到達するシーズンの前年までの2軍での打席数を足し合わせたものである。
これを見ると、上位に捕手が多く並んでいるのが分かる。理由は1軍の正捕手不在で、上で使いながら育成しようとするチーム事情があったのだと思われる。
また、1軍のポジションの兼ね合いで、早く起用されたという選手も当然ながらいる。
しかし、そういう理由を除くと、将来のコアを育てるために1軍で打席を与えようとする意図も見えてくる。いい素材を見抜き、最初は我慢してでも上で使い続けることで1人前にするというものだ。

ちなみに、平均を調べてみるとおよそ933打席となった。目安としては参考になりそうだ。
ここで重要なのはプロスペクトを見抜いて、2軍での打席を多く与えるべきだということだ。同じ933打席でも毎年200打席ずつだと5年近くかかってしまうが、毎年450打席ずつなら2年と少しで到達する。年間チーム単位で割くことのできる2軍での打席数はほとんど変わらないので、それを誰に与えるかというのは最重要課題である。それによって育成速度や育成の成功・失敗、そしていずれはチームの強さにまで関わってくるだろう。打席を与えるというのはいわば投資のようなもので、期待してる選手にほど与えるものである。

反映されやすい指標

次に2軍と1軍の成績を比較した時に反映されやすい指標は何なのかを見ていこう。
※先程の36人の中で
1軍 初のシーズン300打席した年 成績
2軍(前年) 100打席以上 成績
これらを算出できたのが24人だったので、その24人を対象に比較してみた。

これを見ると、K%(三振率)、長打率、HR/PA、OPS、打率に正の相関が見られることが分かった。打率は意外と反映されているらしい。BB%は意外にも弱い正の相関だった。

育成のタイプ分け

次に、育成のタイプ分けをしてみようと思う。
まずは1軍で初のシーズン300打席に到達した年の成績①を見てみよう。

彼らに共通しているのは先程調べた2軍での平均の933打席未満で1軍で規定打席に到達してるという点である。
彼らの成績のほとんどはOPS.700前後である。ほとんどは多少我慢して使うという感覚だろう。
彼らの育成タイプは1軍育成型である。チームの事情によっても変わってくるが、上で使いながら育てるというやり方である。いわば将来への投資である。彼らはここから成長してチームの中心選手となっていった。

次に1軍で初のシーズン300打席に到達した年の成績②を見てみよう。

T-岡田、中村晃、岡本に共通しているのは先程調べた2軍での平均の933打席以上で1軍で規定打席に到達しているという点である。
T-岡田と岡本はOPS.900超え、中村晃は打率.300超えと、いきなり主力級の成績を残している。
彼らの育成タイプは2軍育成型である。2軍でしっかり打席数を与えてから上で起用するというやり方である。1軍で我慢する期間というものがないのは良い点だが、2軍と1軍では投手の差がかなりあって、すぐに対応できる打者はごく少数なので、万人向けではないだろう。

そして、森の育成タイプは天才型である。彼は1年目に2軍たった257打席立っただけで、翌年1軍でOPS.800超えの成績を残した。こういうタイプは珍しい。

まとめ

・2軍ではプロスペクトと見抜いた選手に打席を多く与え、分散して育成スピードが遅くならないようにするのが大切。

・2軍のK%、長打率などは1軍定着初年度に反映されやすい。

・規定打席到達までの2軍での平均打席数がおよそ933打席というのは色んな意味でいい目安。

・3種類の育成タイプ、''1軍育成型''、''2軍育成型''、''天才型''






#プロ野球 #高卒野手 #NPB #プロスペクト #ロマン #規定打席


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