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新年早々しゃべりたいふたり〜万城目学先生に会いに行った話〜

新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。


読みたいふたり


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かおり:2024年お正月早々の『しゃべりたいふたり』。今回は、とあるイベントで万城目学先生に会いに行った話をすることにしようか。

やすこ:うん!楽しかったねえ。万城目先生、お話がすっごくおもしろかった。あれは、時間の制限がなかったら、軽く5時間くらいはお話してくれそうな勢いだったね。

かおり:ホント。サービス精神旺盛な方だなって聴いてて思った。作品のイメージを裏切らない。

やすこ:万城目先生は作家になる前に社会人生活も送られていたんだよね。会社員をやめて、小説家一本でやっていこうと決めた時のエピソードはなかなかおもしろかった。

かおり:上司に辞める理由を聞かれて「小説家になりたいと思って」って言ったら「あぁーーっ…」って言われたっていうね。その「あー」の言い方に笑った。

やすこ:なんて言うか、万感のこもった「あー」だったよね。

かおり:社会人時代に何かで賞をとって目途がついたからやめるんじゃなくて、一旦無職になって小説を書く時間を作るための退職。勇気あるなあ。

やすこ:きっと本当にやりたいことだったんだねえ。私たちとしてはおかげで面白い作品が読めるんだから、よくぞ決断してくれましたって感じだけどね。

かおり:私、ちょっと親御さんの気持ちを考えちゃった。私が親なら「ええ~っ」って思いそう。せっかく京大を出て、安定した一流企業に入ったのにって(笑)
それはともかくその頃は井上靖先生の影響を多大に受けて天平時代のお話を書いていたんだってね。万城目学と井上靖、ちょっと意外な組み合わせじゃない?全然知らなかった。

やすこ:ね。私も知らなかった。でも言われてみれば歴史ものの話も多いよね。万城目先生、井上靖作品の『天平の甍』や『楼蘭』の紹介の仕方も本当に上手だったから、絶対読もうって思った。申し訳ないけど『しろばんば』しか読んだことなかったよ……

かおり:私も話を聞いて「井上靖作品って面白いんだ」って思って読みたくなったよ。10代で『しろばんは』と『夏草冬濤』を読んだ時は、正直全然ピンとこなかったんだけどね。さすが作家。話が上手くて引き込まれたわ。

やすこ:奇想天外な万城目ワールドは本当に軽いノリの思いつきから始まって、史実を調べに調べて裏付けをとりながら最後の1割くらいにあり得ないエピソードをぶち込んでる話とか、小説には自分のエピソードは盛り込むんだけど、そのまま盛り込んだらそれは小説じゃないから、客観的な視点て自分が消えるように書けるようになるまでに時間がかかった話とか、裏話が聞けてよかったね。

かおり:読者は一杯のエスプレッソを楽しんでああだこうだ言うけど、その一杯を抽出するためにはエスプレッソマシンを作るところからやってて、そこがすごく大変なんだと言ってたよね。作家業って根気がいる仕事だなあ。

やすこ:最後は質疑応答の時間も設けてくれたんだよね。やっぱり手をあげる人はもともと万城目ファンの人が多かったけど、今まで万城目作品を一作も読んだことがないって大学生の男の子がいたじゃない?

かおり:ああ、「こんなまっさらな僕が最初に読む万城目作品は何がいいでしょうか?」って質問してた。

やすこ:あれ、ある意味ちょっと羨ましいよね。作者本人から個人的にレコメンドがもらえるなんて。

かおり:ホントだよ。ちゃんとおすすめされた作品読めよ、少年(笑)。
私も質問したんだけど、『プリンセストヨトミ』に出てくる富士山の下の十字架の話、先生の少年時代の実話だったんだね。特に不思議なものが見える性質ではないそうだけど、別のエッセイでも、人間の大人くらい巨大な赤い鳥が歩いているのを近所の公園で見た話を書いてたし、やっぱりちょっとアナザーワールドに近しい人のような気がしちゃうな。

やすこ:おもしろかったから、2時間があっという間だったね。最後にかおりさんは『八月の御所グラウンド』、私は『ヒトコブラクダ層戦争(上)(下)』を物販で購入して、万城目先生にサインしてもらったんだよね!

かおり:せっかく作家の講演会に行ったら、著作にサイン欲しいもんね。イラスト付きのサインうれしい!イラスト、なんで瓢箪?って思ったけども。

やすこ:ねー。読み終わったら交換しようね!

かおり:実は私、『八月の御所グラウンド』は講演会前日に図書館で読んだんだ。すっごく良かったから、サイン貰うなら絶対この本がいいと思ってこれを買ったの。そのことをサイン貰う時に言ったら、先生、パッと顔を上げて「本採用ですか!」って(笑)
咄嗟のワードセンスがさすが!

やすこ:えー!そうだったの?私、読むのに時間かかりそうだよ。『ヒトコブラクダ層戦争』は『ヒトコブラクダ層ぜっと』の改題なんだね。正月休み中に読み終えられるかなあ。万城目先生、最近ちょっと大作になりがちで読むの大変かもなって言ってたもんね……。

かおり:やっぱりさ、下準備に下準備を重ねて執筆してるから、あれもこれも盛り込みたくなるのかもしれないねえ。本当に読み応えがあるもんね。

やすこ:小説って読む方は楽しいだけだけど、生み出すのは大変だよね。そう思った。でもね、小説はAIでも書けるって時代になったけど、人間が苦しみながら書く物語とAIが書いたものを並列で比べないで欲しいなという気もしたよ。

かおり:そのうち万城目学風のAI小説も可能になるのかな?その時が来ても「『〇〇風』と本物はやっぱり全然違うよね」と言える読み手でありたいものだわ。

やすこ:そうだね。今年もたくさん読んで、読む力を鍛えていきましょう!


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