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最後に食べたいおやつ=幸せな記憶という話〜小川糸『ライオンのおやつ』〜

かおりさんへ

こんにちは。
しばらく、温暖でレモンが有名なシチリア島に行っていました。
毎日が世界遺産三昧で、幸せな日々でした!でも、帰ってきて1週間。あっという間に日常に戻っちゃったわ。時差ボケはなかなか直らなかったんだけどね……

さて、今週は図書館でたまたま見つけた瀬戸内海にあるレモン香る小さい島にあるホスピスの話、小川糸『ライオンのおやつ』について書こうかなと思います。2020年本屋大賞の第2位で、NHKでドラマ化もされてたのね。

若くして余命宣告を受けた雫が暮らす終の住処の「ライオンの家」。日曜日になると入居者は「もう一度食べたいおやつ」をリクエストすることができる。「くじ引き」で選ばれた人のおやつが再現されるのだが、雫はなかなかどのおやつをリクエストするか決められない……

「ダ・ヴィンチ」のWEB版で小川糸さんは、この本についてこう語っているんだよね。

『最後の食事』はすぐに思いついても、『最後のおやつ』はなかなか思い浮かばない方も多いと思います。だけど、人生の最後にもう一度食べたいおやつを思い出そうとすると、そこに結びついているのはたいてい幸福な記憶だと思うのです。自分の人生が幸せだったと気づけるきっかけになる気がします。

                *「ダ・ヴィンチ」WEB版『ライオンのおやつ』小川糸インタビュー

「なるほどなあ」と思ったんだよね。「おやつ」はなくても生きていけるものだからこそ、「幸せな思い出」と結びついている確率が高いというか。

私が『最後のおやつ』を選ぶとしたら、小さいころに母が作ってくれたブラマンジェかな。牛乳で作ったゼリーなんだけど、上の層が子どもが食べるにはちょっと苦いコーヒー味で、カルピスで作ったソースをかけるの。

何度かリクエストしたんだけど、もうレシピを忘れてしまったらしく、久しく食べていない。母は昔からおやつをよく作ってくれたけど、ブラマンジェはちょっと他のおやつとは違って、大人の味で、何だかお姉さんになった気分になれてうれしかったんだよね。

うん、やっぱり幸せな記憶かもしれないな。この本は「死」を扱っているけれど暗くて辛い感じにはならなくて、「こんな最期を迎えられたら幸せなんだろうな」と思えるお話。それは『最後のおやつ』をモチーフにしているからなのかもね。まあ、ちょっと「夢物語」的で若干オカルトな部分もあるとは思うんだけど、優しいお話です。

かおりさんはどんな『最後のおやつ』を選ぶのかしら?今度教えてね。

2024年6月14日
やすこより


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