本人確認

僕には妻と子供達がいる
ベタなことだが夫婦共通の悩みというか考えないといけないことといえば、子育て。長男は中学生。思春期の扉を開けたり閉めたりウロチョロしている息子に、ここぞという時には心に響く言葉をかけたいとは思いながらも、ここぞがどこなのか、そして何を言葉にするのがいいのかを親の僕が探す日々だ。
僕は本当に未熟だなと思う。未熟なおっさん。ひどい言葉だ。
こんな未熟なおっさんが子育てをする場合、頻繁に出くわす場面がある。それは、自分の事を棚に上げ、子供を注意したり叱ったり諭したりという場面だ。「これさ、俺が言っても説得力ないよね。ハハッ」みたいな自分の心の声が最近特によく聞こえる気がする。もし子供に、「じゃあお前はその辺まるっと全部ちゃんとしてきたんかい!」と言われたら、僕はなんて返すのだろう。
このままだと苦虫を5匹ほど嚙み潰して苦悶の表情をみせるしか手がない。
それはまずい(不味い)
そうならないためにも、一度ちゃんと振り返ってみようと思った。本人確認だ。今まで生きてきた日々を僕自身がもぐもぐと咀嚼して、おいしい味はしなくとも、わずかに吸収できるであろう栄養を子供達に伝えることができればいいなという希望をもって振り返ってみる。

では、いこう。遡ること40数年前、僕は上場企業に勤めるサラリーマンの父と、専業主婦の母との間に生ま
いや、待てよ。
待て。このスタートはやっぱりまずい。今の僕が書き記したいことは子供のことだ。自分の過去を遡ってうんたらかんたらではない。子供のことは話すのに自分の話はしないというのは、いささか子供に悪い気がしたので自分語りを先にしようかなと考えたのだが、ここにきて面倒くささが勝った。僕がどうしてこんなだらしないおっさんになってしまったかの歴史を振り返ることはまたいつかにしよう。

さて、気を取り直してここからが本題。子供の話。
ウチの長男は思っていることをあまり口に出さない。これは思春期以前からそうだ。なにかを口で説明するのも下手くそだし、その時々の思いや感情を言葉に出して相手に伝えることも苦手だ。これは本人も小学生の頃から自覚していた。だが、大人しく控えめな子というわけではない。そこそこ明るいし、楽しい奴だ。今は思春期っぽくなってるけど。
なので、基本的には心配はしていない。学校生活も特に問題ないし、成績もいい感じの位置をキープしているので「未熟なおっさん」を自認する自分の子としてはむしろ上出来なくらいだ。
ただ、小学生時代からよく分からないことが一つあった。それがサッカー。
長男は今現在もクラブチームでサッカーをしている。小学生から同じチームで続けている。そしてあまりハマっていない。けど、続けている。中学に上がる時に本人はもうサッカーはいいかなと言っていたのに。
当然続けている理由はあるはずだ。チーム内での序列も高くない息子がサッカーを続けている理由。本人に聞いても「まあ、別に。他にやりたいこともなかったし」くらいのことしか言わない。これが本音だとするならばまだいいが頭をよぎる嫌なパターンが一つあった。最近それを特に思う。当たっていてほしくないがあいつがサッカーを続けている理由。
「親の誘導」だ。
僕は学生時代野球をしていたがサッカーも好きだった。Jリーグや代表戦、日本でのワールドカップも観にいった。そんなサッカー好きな親父による誘導だ。小学校卒業間際の時に、同じクラブのジュニアユースに上がるかどうかの際、あいつに決めさせた。もちろん、クラブを辞めて中学校の部活で他のことをしてもいいとも言った。自分の思うようにしなさいと。
しかし、その言葉とは裏腹に、あの時期どうにかサッカーを選ばないかとあいつの気持ちを誘導していた気がする。
「やっぱサッカーっておもろいよな」
「折角今まで続けてきたしな」
「今はBチームだけどお前はこれから伸びていくタイプだから」
「センスあるよ、体ができてきたら絶対一気にいくから」
こんな声かけをしていた。サッカー素人の親父が。自分の思うようにしなさいと言いつつ。
もし、僕の誘導がサッカーを続けている理由だとしたらとてもいけないことをしてしまったと思う。息子の練習や試合を観ている時にふと頭をよぎる。
あいつは何を思ってサッカーを続けているのだろうと。








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