見出し画像

生きていることが次の本につながる不思議

これは私が先日体験した本との運命的な再会のお話しです。

(※2020年7月にInstagramに投稿した文章を追記・編集しています)

2年ほど前の現役書店員の紀伊國屋時代、お客様から問い合わせをきっかけに「陽光」の存在を知りました。綺麗な装丁が印象的だなあと思ったのに、その時お店はとてもバタバタしていて慌てて業務に戻ったので、そのままその本の存在は忘れてしまっていました。

そこから2年経ち、先日私は壱岐(長崎の離島)に行ってきました。壱岐の旅目的は泳ぐことメインでしたが、島の歴史も学びたいと思い博物館や壱岐出身の実業家の資料館にも足を伸ばしていました。壱岐を知れば知るほど自然は豊かで歴史も深いことを知り、私は壱岐に夢中になりました。

名残惜しくも、壱岐から我が街福岡に帰ってきて数日。ふと思いつきTSUTAYAさんの古書コーナーに足を運びました。するとなんと、全品20%OFFのセール期間ではありませんか。セールに興奮しながら、何かまだ見ぬお宝はないかと普段は見ないような棚までじっくりしつこくパトロールしていました。すると、郷土のコーナーに見覚えのある背表紙があって(紀伊國屋時代に見た綺麗な装丁の本)、思わず手に取ると、それは「陽光」でした。

————————————————————

少し緊張しながらページをめくると、そこには何と壱岐の文字が。そう、陽光は壱岐を舞台にした小説だったのです。2年前の紀伊國屋の問い合わせの記憶から数日前まで過ごした壱岐、本を手にとっている今までを走馬灯のように感じて、迷わず購入しました。

(感想は昨年のインスタグラムを参照頂ければ嬉しいです。)

————————————————————

内容は素晴らしすぎて紀伊國屋でお問い合わせを受けたときにもっと興味を持てればよかったとも思うのですが、やっぱり、私がこの本に出会うタイミングは今だったとも思います。先日訪れたばかりの壱岐の記憶が鮮明だからこそ、小説の中の郷ノ浦の港、在りし日の今はもうない砂浜が余計に素晴らしく感じるのかなと。

生きてること(壱岐に行って、その土地を知って、感じたこと)がまたこの本に出会い直させてくれたような不思議な体験でした。

(ここまでが2020年7月に書いていたエッセイです。ここからまた、不思議なご縁は続きます。)

————————————————————

自分でお店を開くなんて(開きたいという気持ちはもちろんあったけど)夢にも思っていなかった一年と少し前から時は過ぎ、今年の7月にbooks yometa!を開業することができました。慣れない日々にばたばたとしつつも充実した毎日を過ごしていたある日、書店仲間のBOOKS ARENAさんがお祝いに駆けつけてくださいました。そこでお祝いに頂いたのが、嘉村佳奈さまへと書かれたサイン入りの陽光だったのです。事態が飲み込めずわたわたしている私にARENAさんは、実は著者の松嶋さんとは高校の同級生で去年私が投稿した記事を覚えてくださっていて今回のお祝いにプレゼントしたという何とも衝撃なことをおっしゃったのです。あの記事をアップした時、いや最初に紀伊國屋で問い合わせを受けた時には想像もつかない、まさかの再会でした。

そしてARENAさんのご好意でbooks yometa!でも陽光を販売できるようになり、4冊のサイン入りの陽光が旅立って行ったのです。

————————————————————

そして今日(2021年10月10日)、陽光を課題図書とした読書会を開催しました。(コロナウイルスもまだ予断を許さないので、こじんまりと、陽光を購入してくださったお客様にだけお声掛けして。)久しぶりの読書会でそれだけでも嬉しいのに、課題図書は陽光です。それぞれの感想と、それぞれの人生、そして少しの雑談。本当に豊かな時間を過ごすことができました。

陽光は、またきっと読みなおす、私にとって大切な一冊です。

そんな本に出会えたこと、出会い直せたこと、小さなお店をきっかけに知っていただけたこと。本との出会いは本当に不思議なものですね。

お読みいただきありがとうございました!

それではまた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?