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職場に家宅捜索がはいった話

結婚して間もない頃、自宅からバイクで10分くらいのところにある会社で
アルバイトしていた私。

この記事を読んでくださっている若い方は、
「テレクラ」ってご存じだろうか?(今もあるのかな?)
男性会員がお金を払って女性と電話で話をするというもので
私は、その運営会社の事務職で週3回ほどお世話になっていた。

家族経営の会社で、お父さんである社長は滅多に見かけなかったけど、
役員のお母さんと経理担当の娘さん、
私ともう1人事務で雇われている女性の3~4名で運営していた。
みんな気さくでいい人達。おやつも食べ放題!
言うことなしの職場で、長く勤められると思っていたのに・・・。

3階建ての小さなビルの中には、社長室、事務室の他に
女の子たちが電話をする部屋があって、いつも数人が常駐していた。
が、稀に女の子が足りないことがあって
「まむちゃん、ちょっと電話出てきて~!」と頼まれたことがあった。

・・・・?!
全く想像していなかった世界がそこにはあって、
驚きと気持ち悪さで一言も発せられず電話を切ってしまった。
(その後、二度と電話に出てと言われることはなかった)

息遣いの荒い男性が
「ねぇ(ハァ ハァ)いま どんなパンツはいてるの?」

なるほど・・・電話で話すだけで女の子たちの給料が高いのは、
こういう電話の相手を上手にしてあげるからなんだ、と知った。

あとで女の子達に聞くと、ほとんどがこんな電話だと言うし、
更にエスカレートした要求もあるって?!

ただ、彼女たちは長机の上に等間隔についたてがあるだけの場所で
電話をとっているわけで、すぐ隣に他のバイト仲間がいる。
男性の要求どおりパンツを脱いでエッチな音を聞かせるなんて
できっこないわけで。彼女たちは、素晴らしいテクニックを使って
それらしい音を出して、電話の向こうの男性達を喜ばせていた。


仕事に慣れてきた頃、自宅が会社から1番近いという理由もあって
私が出勤する日は、早めに出社して鍵を開けるようになっていた。

ある日、いつものように出社して鍵を開けようとしていた時、
どこからともなくスーツ姿の男性十数人が一斉に湧いて出てきて
あっという間に私を取り囲んだから、もうビックリ!

(エ~~~~~~ッ?!なになになになになに????)

男性のうちの1人が、1枚の白い紙を開いて私に見せる。
刑事ドラマでよく観るやつ!家宅捜索令状だった。

「これからここの家宅捜索に入ります。
 あなたは、この会社の社員ですか?
 立ち合い証人になっていただきます。」

アルバイトだと話をして、令状を見せられているところの写真を撮られた。
震える手で鍵を開けると捜査員が一斉になだれ込む。
ドラマで観るとおり、あっちこっち引っ掻き回して何かを探している。
そして、社長の自宅でもまさに同時刻に家宅捜索が行われているという。

「あの・・・何を探しているんですか?」と聞いてみると
「拳銃です。トカレフ。ここにあるというタレコミがあったので。」

え・・?ここに拳銃?
実は、ここの社長は元「組」の人だったらしい。
結構長い時間探していたけれど、結局お探しの物は出てこず、
捜査員たちは引き上げていった。ひっ散らかしたまま・・・。
後片づけは本当に大変だった。

その後、何故だかわからないけれど会社はそのまま再開されず、
突然働き場所を失う形になってしまった。
長く働けそうだと思っていただけに本当に残念だった。

まぁ、希少な体験ができたことは良かったかな?

~完~


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