風の強い日

毎日自転車に乗る。中学高校時代も自宅から自転車で20分ほどかけて通学していた。通学路の大部分は一面に田んぼが広がる農道で、風の影響によって大きく体感スピードが変わったのを覚えている。朝はぎりぎりに家を出ることが多かったので、風が強くて遅刻するというのは深刻にありうる話だという実感を持っていた。なんで行きも帰りも向かい風がつらいんだ、どっちかは楽させろよ、などと当時は考えていたが、今思えば海風陸風とか言うように朝と夕方では風向きが違っているほうが自然なのかもしれない。それに実際風で楽できるのは追い風のときだけで、完全な向かい風ではなくとも横風を受けるだけでけっこうつらいので、抵抗を受けるのは移動する者の宿命なのだと納得するしかないのかもしれない。(かっこいい)

そして今では風の強い日に自転車を漕ぐたびに、むしろ無風という状態の奇跡性を思うようになった。われわれは地球というひとつの球体にへばりつく、宇宙から見ればごくごく薄い大気の底に生きている。そしてそこにはさまざまな天文学的要因によって駆動される大気の大循環システムが存在している。赤道と極地方では太陽から受け取る熱量が全然違うので、それによる温度差を打ち消すように、今この瞬間にも大気と海洋が地球規模の大移動を続けているのだ。そんな地球の上の中緯度地域のある一点を拡大しつづけていくと自分がひとり立っている。そこに無風などという状態が訪れようとは、到底想像ができない。

しかし風が止めばそんなことは忘れてしまう。ここらの桜は今日で大方とどめを刺されてしまった。風が吹くから風が吹かないことを思える。そうして季節は進んでいく。

世界中の風の流れを可視化するサイト
https://www.windy.com/
こうして見てみると、陸地では地形の影響か?海と比べるとかなり風が弱いことがわかる。しかし上空の風を見ると状況は一変して、海も陸もなく風が吹き荒れているのが見える。

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