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打合せで姑に泣かされた花嫁

長く結婚式の司会者をしいていると忘れられない新郎新婦がいるものです。そんな中でも時々ふと思い出す、ある花嫁のお話。

結婚式の本番当日まで新郎新婦は何度も何度もウエディングプランナーと「打ち合わせ」をします。お料理の内容はどうする?会場に飾るお花は?引き出物は何がいい?世界で一つだけの結婚式を一から作るのですから、その打ち合わせの内容というのは膨大かつ煩雑です。

司会者も「打ち合わせ」に参加します。だいたい1回。多いと2回。最近は0回なんて式場もありますが…おすすめしません。何故か、については違う機会にお話ししましょう。

その新郎新婦との打ち合わせは1回だけ。レストランウエディングでした。打ち合わせは司会者と新郎新婦の3人で進めることもあれば、ウエディングプランナーを交えて4人。さらには当日のサービススタッフと一緒に5〜6人で行うこともあります。この日はウエディングプランナーを交えて4人と聞いていたのですが、打ち合わせ場所には新郎新婦の横に年配の女性が一人。ウエディングプランナーから
「ご新郎のお母様でいらっしゃいます」
と紹介され、嫌な予感がしました。

司会者を交えた打ち合わせでは主に披露宴の進行を決めます。挨拶は誰に?紹介方法は?ケーキ入刀はする?ファーストバイトは?余興は誰に?何をしてもらう?と言った具合です。

私の予感は的中。お母様、全ての内容にことごとく口を出す出す出す。
「その人が挨拶するなら、あの人も出さないと」
「ケーキを食べさせ合うなんてみっともないわ」
「余興は親戚の○○さんが歌を歌ってくれるから」
などなど出てくる出てくる。
ウエディングプランナーも私も新郎新婦の意向を最優先に取り入れたいのですが、お母様にかなり押し切られる形に。ウエディングプランナーも私も若かった…。今ならもっと上手にやれる気がします。

打ち合わせ終盤、「じゃ、私はこれで」と突然席を立たれたお母様。

慌ててウエディングプランナーがお見送りに走ります。残ったのは新郎新婦と私………次の瞬間。

花嫁が声を押し殺しながら 涙…涙…涙

私がなんて声をかけたら良いかわからず逡巡していると、
新郎がやってくれました。爆弾投下。

「え、なに泣いてんの?(笑)」

この結婚やめとけ!!今すぐ!!

と心の中で叫んだ私でした。結婚式当日はずっと泣いているお母様の姿しか覚えてません。
あの子、幸せにしているといいな。…どんな形でもあの花嫁が今、幸せでいてくれたら…いいな。司会者は基本、結婚式が終わればもう二人と会うことはありません。だからこそ、ふと思い出しては、こうして幸せを祈っています。

【次回予告】
『深夜0時、新郎からの電話』

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