蜜蜂と遠雷 恩田陸
久しぶりに長編小説を読んだ。高校生までは読書が大好きで貪るように本を読んでいたが、スマートフォンを買ってからめっきり読まなくなってしまった。スマホがあると活字欲が満たされてしまう。
そんな私だが、最近本を読む機会が増えた。特にきっかけはない。気が向いたのだ。
今回私は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読んだ。せっかくだから感想をつれづれなるままに書いておこうと思う。
この話は平たく言えばピアノコンクールを通してピアニストたちが高め合い成長していく、といった話である。過去に母を亡くしコンクールから姿を消した亜夜。優れた音楽性をもちコンクールの優勝候補であるマサル。自宅にピアノをもたない前代未聞の天才風間塵。さあ誰が優勝するのか、わくわくしながら読み進める。
熱い、熱すぎる。お互いがバチバチ戦っているわけではないのだ。3人ともそれぞれの個性と演奏を認め合いライバルの音楽を楽しんでいる。もはや誰が一位になるのかなんて、3人とも気にしてないように思える。でもちゃんと戦っているのだ。相手を知ることで自分自身と。だから熱い。面白い。
面白いところはまだまだある。クラッシク音楽なんぞほとんど知らないのにも関わらず、耳元で音楽が流れるのだ。亜夜のピアノが、マサルのピアノが、塵のピアノが。聞こえてくる。これは読書の楽しみだ、なんて考えてしまう。自分で想像する余地があるのだ。逆に言うと想像出来るだけの材料がそこにある。
私のお気に入りは亜夜。彼女はコンクールを重ねるたび自分の殻を破り成長していく。特に3次予選は素晴らしい。1時間の演奏で彼女の人生が歌われる。
コンクールの結果を楽しみに読み始めたのだが終わる頃にはそんなものおまけである。彼ら彼女らが愛おしくて仕方ない。読書はコンクールの客として登場人物たちと一緒になって音楽を楽しみ、大きくなる姿を楽しむことができる。
あーあ面白かった。一度諦めてしまった夜のピクニック、あれも読んでみようかしら。
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