読書メモ: 新1分間マネージャー

新1分間マネージャー 部下を成長させる3つの秘訣
ケン・ブランチャード、スペンサー・ジョンソン 著
金井壽宏 監訳、田辺希久子 訳
2015年 ダイヤモンド社

概要

マネジメント手法について「1分間目標」「1分間称賛」「1分間修正」という、とてもシンプルな方法が紹介されています。
部下が自分自身を管理し、大きな成果を実現することをマネジメントの目的としており、上記の3つの方法により効果的な動機づけが行われることを意図しています。

3つの秘訣

1分間目標、1分間称賛、1分間修正とは以下のようなやり方です。

1分間目標の効果的な活用法
①部下と協力して目標を立て、その目標を簡潔かつ明瞭に記述する。すぐれたパフォーマンスとはどのようなものか、部下に示してみせる。
②部下の目標を、目標ごとに1ページずつ、期限も含めて書き出させる。
③重要な目標については毎日見直しをさせる。これには数分しかかからない。
④1分間で現在の進捗状況をチェックし、自分の行動が目標と一致しているか確認するよう促す。
⑤行動が目標からずれていたら、現在の活動を見直すように促し、いち早く目標が実現できるようにする。

p.46

1分間称賛の効果的な活用法
[最初の30秒]
①できるだけ早く称賛する。
②どこが正しかったのかを具体的に伝える。
③部下が正しいやり方をしたことがどれほどうれしく、役立っているかを伝える。
[小休止]
④少し間をおいて自分の行動に対する満足感を味わわせる。
[後半の30秒]
⑤同じことをさらに続けるよう激励する。
⑥部下を信頼していること、その成功を援助することをはっきり伝える。

p.58

1分間修正の効果的な活用法(目標が明確な場合)
[最初の30秒]
①1分間修正はなるべく早く行う。
②事実を確認したうえで、一緒にミスを振り返る。検証は具体的に。
③部下のミスと、それが結果に及ぼす影響について、自分がどう”感じて”いるかを伝える。
[小休止]
④少しの間沈黙して、自分のミスと向き合わせる。
[後半の30秒]
⑤ミスは取り返せること、人間として評価していることを伝える。
⑥信頼していること、部下の成功を応援していることを伝える。
⑦1分間修正が終わればそこで完結し、いつまでも引きずらないようにする。

p.74

なぜこの3つが大切なのか

本書の中で、ボーリングの例えが示されていました。
ピンがぼんやりとしか見えず、ボールを投げても音はするが何本倒れたのかはわからない、ゲーム終了後になって「8本も残っていたぞ」と言われる、そんなボーリング。
しかし、職場に置き換えたとき、やるべきことが不明確な上に、やった後で「これじゃない」と言われる、そんなことが起きているのなら、この「つまらないボーリング」は「例え」ではなく「実際のこと」なのです。

つまり、まずは目標が明確であり、上司と部下の間でズレがないことが重要です。これが「1分間目標」を定める理由です。
また、やったことが「良い」のか「悪い」のかを頻繁にフィードバック(=1分間称賛、1分間修正)する必要があります。

特に、初心者や新しいプロジェクトでは称賛を頻繁に行うことが大事です。
このとき”おおむね正しい”なら受け入れ、段階的に要求水準を上げていくことです。

段階的に目標を立てていけば、個々の目標はより達成しやすくなります。
(中略)
たいていのマネージャーは、完璧に正しいやり方ができるようになるまで褒めようとしません。その結果、多くの部下がハイパフォーマンスに到達できずに終わる。マネージャーがあら捜しばかりするからです。

p.99

また、ミスがあって「1分間修正」をする際は、批判するのは具体的な行動についてのみ行うのであり、”人間そのもの”に言及することがあってはいけません。

目指すべきは部下に自信をつけさせることであって、自信を打ち砕くことではありません。人は自己概念を否定されると、自己や自分の行動を弁護しようとして、事実をねじ曲げることさえあります。防衛的になると人は学ばなくなるのです。だから行動と、人間としての価値は別々に扱わないといけません。ミスを指摘した後に相手の人間性を肯定すれば、行動のほうに焦点があたって、個人攻撃に陥らずにすみます。

p.105

これを通じて、自分の力で仕事を成し遂げたという自信を育み、自分で判断できる能力を育てていきます。
かつては、優秀なマネージャーと、マネージャーに従順な部下というトップダウン型のマネジメントが適していたこともあったでしょうが、複雑で変化の激しい現代においてスピードをもって対応するためには、自律したメンバーが協調していく組織の方が適しています。

「”自分の力で”勝ち取ったという自信があると、どんな変化が起ころうと対処できます。革新を生み出し、先頭を走りぬくには、自信が必要なのです」
「だからマネージャーは意思決定を助けないで、自分で問題を解決させようとしたのですね」

p.56-57

感想

「自分がいなくてもチームが回る状況にする」というのが良いマネジメントなのだなということを感じました。
マネジメントが部下へのコントロールになってしまうと、あれこれ口を出すことになることで部下が自分の考えを持たなくなり、モチベーションも下がってしまうというのは、当たり前のことではありますがなかなかできないものです。
その背景には、短期的な成果しかターゲットにできていない状況があるのかもしれません。
育成は時間のかかる投資なので、日々の作業に追われていればつい後回しになってしまうものです。
しかし、それは短期の成果の代わりに、長期の成果を損なっているということを自覚する必要があります。

1分間称賛や1分間修正で小休止があるのは注目に値するところかと。
思考をするためには間(ま)が必要というのは、以下の記事が印象的でした。

あなたの研修・授業・ワークショップには、問いと答えのあいだに「間(MA)」を確保できていますか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12967

仕事を「自分のこと」として受け止めるためには、考えて「腹落ち」することが必要です。
そこにたどり着かないと「上司から言われたことをやる」となり、モチベーションにはつながりません。
マネージャーと部下がともに仕事をしているという実感を、行動をもって作っていく、それがマネージャーにとってとても大切なものだということを感じました。

毎日1分間、手を止めて部下や同僚の顔を眺めてみよう。
彼らこそが、最も大切な資源であることを思い出そう。

中扉より

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