老舎 『断魂槍』 (11)
客が入って来るのを、沙子龍は表の間に出て待っていた。互いに拱手の礼を交わして腰を下ろし、彼は三勝に茶の支度を言いつけた。三勝は二人の老人がすぐにでも手合わせすることを望んだが、茶の支度に行かぬわけにはいかなかった。孫老人は口を閉ざしたまま、奥まった眼で沙子龍を観察した。沙子龍は畏って言った。
「三勝が無礼を働いたということなら、どうぞ相手にせんでください、まだ若いのです」
孫老人はいささか失望したが、沙子龍をものの分かる賢い男と見受けた。彼はさて、どうしたものか困った。賢さや人の良さと武芸の腕まえは別の問題である。
「槍術の教えを乞いに参ったのです!」
彼は思わず口にした。
沙子龍は応じなかった。王三勝が急須をさげて入ってきた――二人の立ち合いを見逃すまいと、湯が沸いたかどうかも確かめず、急須に入れて持ってきたのだった。
「三勝よ」
沙子龍は湯呑みを手に取って言った。
「小順らを捜しに行きなさい。これから『天匯』へ行って、孫先生のお相伴をさせていただこう」
「えっ! なんだって?」
王三勝の眼玉はもう少しで跳び出すところだった。師匠の顔をじろじろ見ながら、されど怒りを露わにするわけにもゆかず、ひと言「分かりました!」と言って、その場を離れた。膨れっ面で。
〈原文〉
客人进来,沙子龙在外间屋等着呢。彼此拱手坐下,他叫三胜去泡茶。三胜希望两个老人立刻交了手,可是不能不沏茶去。孙老者没话讲,用深藏着的眼睛打量沙子龙。沙很客气:
“要是三胜得罪了你,不用理他,年纪还轻。”
孙老者有些失望,可也看出沙子龙的精明。他不知怎样好了,不能拿一个人的精明断定他的武艺。“我来领教领教枪法!”他不由地说出来。
沙子龙没接碴儿。王三胜提着茶壶走进来——急于看二人动手,他没管水开了没有,就沏在壶中。
“三胜,”沙子龙拿起个茶碗来,“去找小顺们去,天汇见,陪孙老者吃饭。”
“什么!”王三胜的眼珠几乎掉出来。看了看沙老师的脸,他敢怒而不敢言地说了声“是啦!”走出去,撅着大嘴。
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