老舎 『断魂槍』 (10)
「孫どの、お国は?」
「河間の片田舎でな」
孫老人も少し穏やかになった。
「『棒一月、刀一年、槍一生』とはよく言ったもので、そう容易に物にできるものではない。正直にいって、さっきのお前さんの槍はなかなかの腕まえだったぞ!」
王三勝の額にまた汗が戻ってきた。彼は黙ってしまった。
宿に着くと、彼は沙先生がいるかどうかのみ気にかかり、胸がどきどきしていた。彼は仇討ちを急いでいた。彼は先生がこの手のことを嫌うことも知っていた。弟弟子らはすでに何度も断られている。しかし、今回はきっと大丈夫だと彼は信じていた。彼は門弟頭なのだ、小僧どもとは格が違う。それに、相手は縁日において名指しで手合わせを請うたのだ。それを断るような卑怯なマネが沙先生にできるだろうか。
「三勝か」
沙子龍は寝ころがって『封神演義』[明代の神怪小説]を読んでいるところだった。
「なにか用か?」
王三勝の顔がまたも蒼ざめた。唇は動けど、言葉が出ない。
沙子龍は起き上がり、たずねた。
「どうしたんだ? 三勝よ」
「やられてしまいました!」
そう長くない欠伸をひとつしただけで、沙先生はほかに反応を示さなかった。
王三勝は心中穏やかでなかったが、それを打ちまけることなどできなかった。彼は師匠を焚きつけねばならなかった。
「孫という老人が外で先生を待っております。槍を、わたしの槍を、二度も叩き落としたのです」
彼は「槍」という言葉が師匠にどれほど重みのあるものか知っていた。言いつけを待たず、彼は急くように飛び出していった。
〈原文〉
“孙大叔贵处?”
“河间的,小地方。”孙老者也和气了些:“月棍年刀一辈子枪,不容易见功夫!说真的,你那两手就不坏!”
王三胜头上的汗又回来了,没言语。
到了客栈,他心中直跳,唯恐沙老师不在家,他急于报仇。他知道老师不爱管这种事,师弟们已碰过不少回钉子,可是他相信这回必定行,他是大伙计,不比那些毛孩子;再说,人家在庙会上点名叫阵,沙老师还能丢这个脸么?
“三胜,”沙子龙正在床上看着本《封神榜》,“有事吗?”三胜的脸又紫了,嘴唇动着,说不出话来。
沙子龙坐起来,“怎么了,三胜?”
“栽了跟头!”
只打了个不甚长的哈欠,沙老师没别的表示。
王三胜心中不平,但是不敢发作;他得激动老师:“姓孙的一个老头儿,门外等着老师呢;把我的枪,枪,打掉了两次!”他知道“枪”字在老师心中有多大分量。没等吩咐,他慌忙跑出去。
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