Webテストの不正は、就活生が思う以上に明確に表れている

就職活動での悩みのひとつが、「筆記試験」です。
最も多く使われているSPI以外にも、玉手箱やTAP・GABなど、さまざまな種類のテストがあり、就活生が対策すべきことのひとつとなっています。

今年(2020年)、コロナウイルス問題によって、多くの企業が会場やテストセンターで筆記試験が実施できなくなったことで、一躍注目を浴びたのがWebテストです。
そして、手っ取り早い対策として利用される「解答集」や「代行業者」もまた注目されているようです。

しかし、解答集や代行業者を使用したのかどうかは、就活生が想像する以上にわかりやすいものです。その理由を説明しましょう。
(本記事は、性格検査の部分は除外して書いています)


筆記試験はなぜ行われるのか?

はじめに、筆記試験の目的を知っておきましょう。

筆記試験では、論理的思考力があるかを測っていると私は考えています。内容は言語的なものと非言語的なものにわかれていますが、どちらも論理的思考力につながるものであり、ひいてはコミュニケーション能力のベースにもなります。

「コミュニケーション能力に計算が必要なのか」と思う人もいるかもしれません。社会人でも、「学校で学んだ算数・数学や、SPIでやったことなんて、仕事で使わない」と言う人も多いです。
確かに、旅人算や濃度算といった問題が直接出てくることはありませんが、戦略的に仕事を進める場合には、算数的な論理的思考力を使っています(詳細は省略しますが…)。
つまり、重要な仕事を任される人材ほど、非言語も含めた能力が求められると言えます。

その力を持ち合わせているかを筆記試験で見ています。


筆記試験は優秀な学生でも差がつくように設計される

では、筆記試験はどのような点を意識して作らなければならないのでしょうか。

大手企業になればなるほど、多くの学生がエントリーします。旧帝、早慶などの偏差値的に優秀とされる人たちから、学業の面ではそこまでではない人もたくさん集まるでしょう。
採用担当者は、多数の学生から効率的に優秀な人材を探したいと考えています。東大・京大・早慶でも、仕事でつかえない人は山のようにいます。同様に、学歴が優れていなくても、仕事で大きく成長する人も少なくありません。

学力だけでなく、論理的思考力や地頭の良さを持っている(かもしれない)学生をピックアップする手段のひとつとして、筆記試験が使われます。

そのため、「早慶以上なら半数が満点をとれるテスト」では意味がありません。
「東大生でも満点がそんなに出ないテスト」にしなければ、差を見出すことができないのです。


理論上、満点に近い人はほんの少ししかいない

仮に、すべての就活生が同じテストを受験したとすると、得点分布はどうなるでしょう。
「必ずこうなる」と決めつけることはできませんが、偏差値を算出する基本の考え方である「正規分布」に従っているとすると、次の図のようになります。

Webテスト①

偏差値70以上の人は、全体の2%程度しかいません。22歳の人は100万人ちょっとですから、2万人しかいない計算です。国公立大学や早慶でも、偏差値70以上に入る人はそんなに多くないのです。

これらは、統計学においては「ミスかもしれない」と考えられることもあるものです。


解答集や代行業者で高得点を取る人が増えると?

それでは、解答集や代行業者で高得点を取る人が増えると、得点分布はどのように変化するでしょうか。
「偏差値40~69の人たちのたった1%だけが利用し、偏差値75~80の高得点を取った」と仮定して、正規分布の図と重ねてみました。

Webテスト②

グラフを見る限りは、そんなに増えていないと感じるかもしれません。しかし、計算すると、偏差値75以上の人が「2.3倍」程度になっています。
これは明らかに異常です

1%はとても小さい割合です。
1,000人が応募する企業なら、たった10人。
5,000人が応募する企業でも、50人だけです。
いくつものWebテスト代行業者が、「今日は〇人のテストを行いました」「〇〇社の内定者が出ました」と言っています。これが本当なら、すでに1%程度の利用者がいるのかもしれません。


企業側は対策をしてくることが目に見えている

コロナ問題は想定外のことだったので、今年は、企業側も準備ができないままにWebテストに切りかえました。筆記試験を作る業者も同様です。
そして今、彼らのもとには、「異常値がやたら多いテスト結果」が続々と届いています。

2022卒の本選考に向けて、各社とも何らかの対策をすることは目に見えています。しっかりとした選考ができる環境を整えるのもまた、採用担当者の仕事だからです。

・解答集が使えないような出題形式
・解答集を使っているであろうことを発見できるテストの仕組み
・異常な高得点を検知し、本当にできていたのかを検証する仕組み
・そもそもWebテストを減らす

などの対策は当然に行われると考えて準備するのがいいでしょう。


筆記試験対策で仕事にも役立つ思考力をつけるべき

結局のところ、自分の実力を高めるのが一番の近道です。
公式を覚えたり、単語を頭に叩き込んだりするだけの、「就活が終わったら消える勉強」ではなく、「一生使える考える力を身につける勉強」をすれば、おのずと結果はついてきます。

解答集や代行業者を使うなとまでは言いませんが、大切な就職というイベントを「他人任せ」にするのだけは避けて欲しいと願います。

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