高校サッカーで感じる育成論

はじめに

小生はサンフレッチェ広島ファン歴は開幕当初から、活動するという意味でのサポーター歴も十うん年経過しているおっさんサポである。そしてサンフレッチェ広島の育成メソッドで多くの選手に強い関心を持っている。広島サポの目線で高校サッカー論、というのに筆を走らせてみようと思う。

高円宮杯ファイナルにおける事象

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e1e59c9f648ad4c236c31d066d1b3ac91bf8485?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20240109&ctg=spo&bt=tw_up

この記事、東スポという情報ソースを抜きにして気になった部分がある。波紋を呼んだ高円宮杯U-18サッカーリーグファイナルは小生も観戦しているのだが、同点ゴールの部分は青森山田の選手がかGKに「無謀なチャレンジ」をしていて、それが混乱の引き金になっている。当該のプレイについてはJFAがミスジャッジを認定している。私見だが、主審のポジショニングが普通のCKと似たような位置で、多くの選手の影になったうえ、ボールタッチのYes/Noに集中しすぎたことが生んだミスといえる。
この件の本質は、ロングスロー戦術に対する議論以上に
相手にけがをさせるような競技規則に反する無謀なチャレンジを故意・過失関係なく行っている(むろん故意犯なら重罪)
・当該プレイに対し反省せず居直って、相手をあおるような表現をつかっている
ことにある。競技規則の根底にある「リスペクト」や「フェアプレイ精神」という要素が欠けている。

サッカーという競技に携わる以上、このあたりは指導者が矯正しなければならないはず。何も指導している形跡がない時点で「高校年代の人間育成」という部分では指導者に対する疑問しか残らない。青森山田高校およびその指導者が育成・人間形成というフェーズにおいて何を考えているのか?相手に対するリスペクトがあれば東スポのインタビューみたいな相手にリスペクトのない文言がでてこないはずだからだ。

育成年代への私見

昨年末、J.LEAGUE AWARDSで発表された「最優秀育成クラブ賞」だけど、この賞の中身を見ていると、サッカーの土壌を肥沃にするどころか、やせ細ってしまう原因にならないか、と思いながら見ている。今日の高校サッカーでもそうなんだけど「アカデミーに在籍した21歳以下の対象選手の出場時間を評価基準」みたいな結果ばかりを追い求めて、良い選手が育つ「土壌の改質」を後回しにしていないか、という意味で。

海外の育成年代

確かに海外、特に欧州を見ると、18歳から20歳という選手は若手ではない、という意見があるが、日本のシステムで海外の真似をすることは有効なのだろうか?NOだとおもう。海外のクラブは育成もしっかりしているように見られるが、現実はまったく逆。海外は高校年代から育成ではなくプロとしての活動を前提にしているそう。中小の育成クラブから街クラブ、ビッグクラブまでが完全ピラミッド構造をしていて、小学生のころから、子供の成長や素質に合わせクラブに所属し、才能のある選手はあっという間に話題となって中小クラブから街の大きなクラブへ引き抜かれていくという。一部ビッグクラブだと、育てる、というよりは競争だけで、競争のサバイバルに勝てる選手しか欲していない状態。そんなこと日本では無理だと思うし、気質的に合うとも思わない。バルサのユース=カンテラでも、50人というユース枠に入ってもトップに昇格できるのは1割、という時点で競争の激しさは想像を絶する。このため、選手のセカンドキャリアを考えて大学等への進学による文武両道も盛んなのだとか。うん。文化が違いすぎる。

日本の育成年代

上記のような土壌がない日本だと、まだまだサッカーについては後進国と割り切った上で、より先を見据える選手を育てられるよう、しっかりと土壌を整え、大切に苗を育てるような、足元をみた育成が必要になると思っている。そしてそのルートは高卒ルーキーでなくてもいいと思っている。昨年・おととしのサンフレッチェを引っ張った大迫は高卒即トップだったが、荒木・満田は大卒だし、拓夢は愛媛FCで成長したし、野津田は甲府でボランチに開眼したわけだし。各々の場所で成長した選手たちが活躍しているが、すべてルートが違うわけだ。
一方で、Jリーグに高卒で昇格としたとしても、現状サテライトリーグが存在しないので、19~21歳前後の選手が試合に絡むチャンスを作りにくいような気がして、結果として育成型期限付き移籍しかないのが少し難しいところ。

高校サッカーへの提言

高校サッカーだと高校で「終わり」なので、その先の育成も必要ないように思えるけど、高校サッカーを終えた後大学やプロなどに行ったときに立ち戻る基礎や戦術眼、人間性などを本当に伸ばせている?と思う。せっかく高円宮杯ができて、定期的なリーグ戦が形になっているけど、そのような環境下で選手ファーストの育成をしているわけ?今回の高校サッカーで安易に見られたロングスローと、青森山田がロングスローを使わなくても崩していけれたのをみると「安易に勝つ手段」に指導者が流されているように思える。

日本サッカーを大樹にするために

レアな選手を伸ばすこと、見つけることは大事なんだけど、その前にそのような選手が育つ「土壌」を作らないといけない。広島ユースは「土壌」を作った上での育成なので成功している。ここを意外と理解せずに育成論を繰り広げるからおかしな話になっているのではないか?
まずは普及の広いすそ野を広げないといけないのに、過度な勝利至上主義がまん延していて、普及の場で不必要な「戦術ロングスロー」みたいなことが行われているのが現在の日本サッカー界だと思う。育成とは何か、人間形成とはなんぞや、なんてことをいちファンに指摘されているようでは「肥沃な土壌」にはなっていないような気がする。

最後に

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC81%E5%9B%9E%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E5%A4%A7%E4%BC%9A

小生は岡山県出身で、学校があった津山市にあった作陽高校は通学路から毎日のようにみていたので、2002年選手権岡山大会決勝、青山敏弘選手のロングシュートによって生じた誤審と、その後に起こったことを知っている。敗退した作陽高校も、結果的に全国に出場した水島工業にとっても本大会までの2か月は途方になく辛い日々だったことは痛烈に記憶に残っている。あの時良心の呵責に悩まされた水島工業のことを知っているので、青森山田の選手の図太さにあきれている。
そして、広島ユースに対しサッカー協会からのフォローがないばかりか、対戦相手から死体蹴りされたことに猛烈な怒りを感じている。今からでも遅くないので、広島ユースの三年生の心理的フォローをしていただきたいと切に願う。


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