神童/さそう あきら で感じたこと


※できるだけネタバレしないように書いています。内容の雰囲気はざっくり記載しております。

好きな女の子にモテたいためにピアノを始めた八百屋の息子(和音=ワオ)が主人公。
ある日、生意気な小学生の美少女(うた)に出会った事で、彼の人生は大きく動いていく。

この漫画は、音楽の素晴らしさを描くだけではない。
音楽を続けるにはお金も必要だし、権力争いやライバル争いもある。
好きなだけでは、心が弱くては生き残れない世界。
人を蹴落としてでも優位に立ちたい自己顕示欲、成功者への妬み、いやがらせ、理不尽…美しい音楽を奏でる裏で、うごめく人間のドロドロも描かれている。

終盤、「うた」に、ある出来事が降りかかる。
私が若い頃は、彼女に同情し、憐れんでいた。
しかし時を経て、考えが変化した。
どんな才能に恵まれている人にも、羨まれるような人にも、それぞれの苦しみ・悩みがあるのだと。
才能の有無に関係なく、人間誰しも大なり小なりアクシデントや病気、喪失に見舞われるのだ。
たいていそれは、人に言えない場合や、他人からは見えない・わからない場合が多い。
誰かが「みんな平然を装って生きている」と言っていた。多くの人はきっとそうなんだろう。

こういう言葉は良く漫画や小説、自己啓発本などに書かれているありふれたものだ。
けれど、私が実感として「わかった」=「血肉にできた」のは、最近の事だ。

誰しもハンディキャップを抱えて生きている。それを受け止めた先で、どうするかなのだ。

ワオとうた、お互いかけがえのない存在になったこと、お互いへ奏でる音を得たのは人生の祝福だろう。
後半からラストシーンにかけては、じ~~んと感動が胸に迫る。

私はピアノを習った事がないので、こういう世界への憧れもあり、忘れられない作品である。


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