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なぜわざわざ自分でドローンを組み立てるのか?

自分でパーツを買い集め、ドライバーなどの工具を利用して組み立て、電子部品をはんだ付けしてドローンを作る、自作ドローン。

自分で作るからこそ、時速100kmを超えるスピードを出せたり、椅子の下の狭い隙間をも通り抜けることができる特長がある。

こんなFPVドローンを行う人であれば”普通”のことでも、ちょっと界隈を離れると全然普通ではない。ドローンって自分で作るの?って驚かれたり不思議がられるのが普通。

”自作ドローン”の難しさ?を他で例えるなら、自作PCと完成品のPCに似ている。自作PCは、複数のパーツのスペックを考慮した上で”適合するパーツ”を見つけることができれば組み立てる事自体は難しくない。自作PCを行う人口もかなりの数になっているため、いくらでも凡例をWEBで見つけることもできる。

なぜ完成品やBTOで組み立てずにパソコンを自作するのか?

自作PCに関していえば「コスパの良いハイスペックPCを使える」というのがでかい。例えばCPUはそこそこでGPUは豪華にしたいとか、細かいところだと内蔵オーディオやWi-Fiモジュールはいらないなど、自由に選べるので不要なパーツや機能を削ったりできるし、過去に使っていたメモリを再利用するということも可能。

内容は違えどドローンを自作する理由もほとんど同じ。ただし自作ドローンの場合はもっと構造的な理由もある。大別すると、

理由1:完成品が存在しない
まず、出来合いの完成品ドローンがない、というのが一番の大きな理由。シェアNo.1のDJI製の新製品『DJIFPV』があるじゃないか?と思うけれど、これが現在唯一の完成品FPVであり、これ以上小さくしたり、大きくしたりすることはできない。

RTF(Ready To Fly)やBTF(Bind To Fly)といったように予め販売サイトやメーカーが組み立て済のFPVドローンが最近多く出ているが、完成品とは少し異なり、あくまで組み立ててあるFPVドローンが売っているのみ。FPVドローンを始めようという人(予め自作することの前提の理解がある人)にはとても良い商品だか、まったく自作ドローンを知らない人にはハードルが高い商品であることには変わりない。

理由2:非常に壊れやすい
次にドローンを自作する大きな理由が、非常に壊れやすく、常にメンテナンスや修理が必要になることだ。そもそも飛ばし方がアクロバティックでスピーディーであり、ユーザーは何故か狭い隙間を通したがる。
同じメーカーパーツですべてを作っているところもないため、壊れたらメーカーにおくりかえすということもできず、自分で治す必要がある。

ちなみにドローンを自作する場合は以下のパーツとギアが必要となる。

*フレーム
*モーター
*プロペラ
*ESC(Speed Controller)
*FC(Flight Controller)
*VTX(Video Transmitter)
*CCD Camera
*バッテリー
*コントローラー(プロポ)
*FPVゴーグル

FPVドローンは比較的スピードが出やすく、安定的に飛行するにはセンサーに頼らずマニュアル操縦でコントロールする必要があるが、それゆえスキル不足からクラッシュが耐えない。これを書いている今日もドロカメラの各種実験テストを行ってるが、モーター1個、プロペラ4セットを交換することになった。

ある意味壊れることが前提のように”攻める”ためコストを鑑みても自分で作って自分で修理できる状態が望ましいという背景がある。

理由3:用途に応じて制作することができる


ハード的な部分からいったん離れてみると、用途に応じてドローンを作ることができるという大きなメリット。

例えば、過去にフジテレビのドッキリGPという番組で「ドローンを使ったドッキリ」を数回企画監修した。大本の依頼は「番組内でドローンに紅茶のティーバッグを乗っけてドッキリを仕掛けたいんだけど…」というところから始まった。

製作スタッフは、予めDJI製品のドローンを使ってそこにティーバッグをぶら下げ実験したが、センサーが誤反応を起こし、室内でやるにはドローンが大きすぎて、仮にプロペラガードをつけても危険であるということでボツになる寸前だった。

ドローンを自作することができればこれらの問題はいかようにも解決することができる。

まず、搭載するティーバッグの重量や搭載する位置関係と重心を考慮しドローンのフレームを作る。ドローンのフレームにはカーボン樹脂を使って3Dプリンタで造形する。ティーバッグの糸を吊るしやすいように切れ目を入れたり、ティーバッグが絡みにくいように横一直線に搭載するように設計した。

熱湯につけたティーバッグは水分を含み重くなるので、最終のペイロードを想定して十分に浮くことができる最小限のモーターをチョイスする。モーターの大きさから最適なプロペラを洗い出す。

そして安全面に配慮するために、万が一ドッキリ対象者にぶつかったとしても大丈夫なように、ドローン全体を覆うような安全ガードを3Dプリンタで製作した。

FCやESCなどはすでに持っているパーツを流用することができるのでそれで組みあげてコストも低減できた。

実際に飛行実験をしてみると、ティーバッグが濡れていない状態(軽い)からつけて飛び立つ瞬間に重力が一気に増える。そのためフライトコントローラーが誤作動して高く上昇しすぎるなどの問題が出てきた。

こうしたことを回避するためにFCの設定をBetaflightを用いてチューニングする。この時はPID設定やフィルター設定をチューニングする時に誤作動が起こりにくいよう調整した。

この他にも過去のメルマガでも記載したように、剥きプロ(GoProのカバーをすべて分解し超軽量化する)で小型で高画質な映像を撮ったり、LEDをビカビカにして光る玉ドローンをつくるなどこれまでやってきたが、既製品のドローンでは実現できなかったことが自作ドローンではできるのだ。

理由4:単純に楽しい、創る喜びがある


もはや芸術!
友人の小林さんが毎月作るドローンアートでして、実際に飛行する。自作PCユーザーも、ゲーミング用GPUや特別なファンを搭載して自分だけのオリジナルのかっこいいPC環境を作る人がいるように、自作ドローンユーザーにも自分だけのオリジナルドローンを作る人が少なくない。

過去にイベントで「おしゃれドローンコンテスト」を開催したことがあるが、全パーツシルバーで塗装したりして近未来感を出したり(これは飛ばなかったw)、小林さんのように季節や流行にあわせたおもしろドローンを作る人もいる。

ドローンの面白いところは、ただ飛ばすだけでなく、映像を組み合わせることで、アニメのオマージュのようなこともできる。これとか最高すぎる。

○筋斗雲に乗る悟空
http://bit.ly/2KujJc2

飛べるからこそ、これまでと違った表現ができるという面白い側面がある。

用途に合わせた完成品が増えれば増えるほど、それを扱えるユーザーは増えていくはず。こうした技術や好きなことの追求が実際の仕事や産業界に大きく影響しているファクトも数多く、自作ドローンは今後もますます楽しみな分野の一つだ。


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