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Q.書類作成の確実な方法はありますか? また、効率のよい役所の回り方も知りたいです。

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Q.書類作成の確実な方法はありますか? また、効率のよい役所の回り方も知りたいです。

お客様にはいえないのですが、役所に提出した書類が時々間違ってしまうことがあります。重大な事故につながったことはないのですが、お客様にもう一度印鑑をいただくことがあったりして、書類の作成にいつも困っています。失敗のない書類の作成方法はありますでしょうか? また、書類を提出するのに役所間を移動するのですが、時間がかかり過ぎてしまっています。何か効率のよい書類提出方法はないでしょうか?

常に完璧な書類がつくれる人はごくわずか

資格試験に合格する能力と実務をそつなくこなす能力はまったく別物です。そのため、試験には受験1回で合格できた人でも、実務で書類をつくるようになってから苦労するケースは決して少なくありません。私たち実務家はプロですが、その前にひとりの人間でもあります。業務ソフトがあるからといって、すべて自動計算、自動筆記というわけではありません。そのため、書類のチェックというのは厳しく実施する必要があります。

ところが、やはりひとりの人間がつくるとなると、完璧なチェックは難しいものです。人によって間違えやすい箇所、気づきにくい箇所があり、どんなに厳重に精査したとしても間違いは出てしまうものです。そして、多くの士業はひとりで事務所を開業することが多いため、まずはこの「ひとりチェック体制」をつくる必要があります。特に税理士や社労士のように実務経験を経て開業する場合には、経験があるためひとりでもできることが多いといえますが、行政書士のようにあまり実務経験が積めない業界では本当にゼロから書類作成とチェックをする必要がありますので、まずはひとりで完璧な書類をつくるための体制づくりは重要です。

では、どのようにチェックすればよいかというと、いわゆる「手紙の見直し」と同じ手法で、「前の日の夜に作った書類を次の日の朝に見直す」というものがあります。「夜書いた手紙を、朝になって冷静に見直すと赤面してしまう」とはよくいいますが、一晩寝かせるだけでも冷静なチェックができるようになるものです。私自身、ひとり事務所で仕事を始めたため、最初はこのような手紙の見直し戦略でチェックを行いました。

そして、そのまま朝一番に役所に行き、提出してしまうという流れです。さまざまな考え方があると思いますが、もうひとつの質問である「効率的な役所の回り方」に関して、私は朝一番に提出してしまうのがよいと考えています。ポイントは、「最初に着く役所は、役所の開業時間に到着するように出発する」ことで、できるだけ午前中に提出ものは終えてしまうべきです。なぜ、朝の提出を進めるかというと、朝に打ち合わせなどの予定が入りにくいからです。私は、警察署なら警察署に8時半に着くようにし(もちろん例外はありますが)、どんなに時間がかかっても午前中に移動を終えるようにしていました。士業の場合、手続きをしている時間をできるだけ減らし、営業の時間に充てることが事務所拡大のための至上命題です。営業のアポイントは夜にずれ込んでしまうことはあっても、朝になることはまずありません。このようにして、午後から夜にかけての時間を営業に回すことがもっとも効率的です。

このほか、間違えのない書類作成方法としては、「役所に事前相談に行く」という方法があります。おおよその書類をつくって、このような書類で間違えがないかどうか確認するという方法なのでより確実性が増すといえるでしょう。

もちろんいうまでもなく、私たちはプロ(あるいはプロを目指す者)なのですから、いつまでも一から十まで手取り足取り役所に教えてもらうことは望ましいことではありません。できるだけ早い段階ですべて教えてもらう初心者士業からは脱却しましょう。

ところで、役所に相談し書類を事前チェックしてもらうことで書類の確実性は高まります。しかし、役所も担当者は人間です。ですから、役所に見てもらえば大丈夫というわけでもなく、最終的に仕事の責任はあなたが負うことになりますので、自分自身による集中したチェックが必要なのは、いうまでもありません。

最終的には、所内でダブルチェックできる体制に

ひとり事務所で開業し、業績が伸びてきた場合には事務員を採用するのが一般的です。この採用の方法は、いわば「実務作業を手伝ってもらう」ということを意味しますが、最終的にはあなた自身がチェックすることになります。こうしたダブルチェック体制をつくっていくことで、書類の不備は見抜けますが、毎回目視でなんとなくチェックしていては、同じところでミスが出ることもあるでしょう。そこで、業務ごとのチェックリストをつくります。

たとえば、会社設立業務の定款などは、マイクロソフトのワードなどでも作ることができますので、ワードで作成したとします。その際に誤りやすいポイントは、①誤字脱字、②役員、株主の氏名・住所(旧字を含む)、③事業内容や事業年度などお客様によって違う箇所、④単純な行そろえなどの体裁、⑤印鑑の箇所や種類などがあります。大きく分けると「内容そのもの」と「見た目・レイアウト」になります。この2つの分野について、チェックリストをつくっておくと、採用した事務員が作成する書類に不備が少なくなります。

こういった書類の確実性は事務所の信用度です。最初のうちは慎重すぎると思えるほどのチェックをすべきでしょう。仮に多少時間がかかってもかまいません。創業当初から信頼を失っていては、事務所経営も長くは続きません。慣れてくるまでは、石橋を叩いて渡るくらいの気持ちで実務を行いましょう。最後になりますが、業務の中において怖いのが2年目3年目などの「慣れ」が出る頃です。

数年経ち、仕事もある程度軌道に乗ってくれば、創業当初のような慎重さはどうしても影を潜めます。もっとも実務上でミスが出やすいのは、こういった慢心、言い換えれば少し調子に乗っている時期です。こういった時期に気を引き締めて業務を遂行するのが、本当のプロフェッショナルという存在であるといえるでしょう。

【POINT】最初から完璧な書類はつくれない。それよりはチェック体制をつくることに専念しよう。どんなにチェックしても、ミスが出ることはある。最終的に責任を負うのは自分だということを自覚し、慎重に実務をしよう。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

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