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Q.実務の疑問点はネットで調べています。もっと効率良く調べる方法はあるのでしょうか?

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Q.実務の疑問点はネットで調べています。もっと効率良く調べる方法はあるのでしょうか?

実務でわからないことが出た場合、主にインターネットを使って調べています。ネットは手軽に検索できるので便利なのですが、意外と時間がかかってしまっているようです。もっとも効率よく実務について調べるにはどのような手段がありますでしょうか?

インターネットでの調べ物は、実際はそこまでスピーディではない

インターネット検索という手段は、一見手軽でスピーディな方法に見えます。基本的なことを調べるにはたしかにネット検索も便利でしょう。しかし、ネット検索は便利な反面、欠点もあります。その事実をまず知っておきましょう。

大前提としておさえておきたいのは、ネットの情報は100パーセント正しいとは限らないことです。もし、ネットの情報を元に書類を作成したり、相談者に答えたりするのであれば、少なくとも行政がつくっているサイトの情報を元にするべきです。仮に同業者である士業がつくっているサイトだったとしても、最新性・正確性を考えると完璧とはいえません。そのため、まずはネットの情報は「あくまで参考程度」と考えることです。

そして、ネット上には「イレギュラーな事項」についてはほとんど掲載されていないことも覚えておきましょう。ネット上で閲覧できる情報は、基本的な事柄が中心です。私たち専門家が必要とするようなさらに専門特化した情報が掲載されていることは実に少ないといえます。そのため、より専門特化した情報、イレギュラーな情報を探す手段としては、インターネットはあまり向いていないのです。

ですから、情報の信頼性が高い行政が提供しているサイトを中心に基本的なことを調べるためだけに使用するというのがもっとも賢い活用方法だといえます。ただし、行政が提供しているサイトでも、地方自治体レベルになると更新が遅いところも多々あり、やはりネット検索だけで実務の調査を完結させるのは難しいといえます。

それでもなお、ネット検索は数秒もあれば検索できてしまうため、どうしても使ってしまいます。しかし、結果として正しくそして最新の情報が得られなければ、どんなに便利だとしても無駄な努力に終わってしまうのです。

基本は「役所に電話確認」をすること

では、情報の信頼性を確認するための手段として、何が手っ取り早いのかといえば、「管轄の役所に直接電話をして聞いてしまう」ということです。直接電話をかけ、担当者をお願いし、具体的に聞き、必要なら資料を送ってもらうという、なんとも原始的な方法ではありますが、もっとも最短で確実に情報確認が取れます。電話をかけることを億劫に感じる人もいるかもしれませんが、ネット検索よりは確実性が高いといえます。

実際に私の場合も、実務上何か不明点が出た時は必ず役所に確認を取ります。特に行政書士の許認可に関しては、許可取得という結論を出すのは士業ではなく役所です。そのため、士業の意見や法的解釈よりは、役所の現場のほうが「実務的に正しい答え」を持っているのです。もちろん、法律という基本的なものがありますので、原則として正解は法律の中にあるのですが、人間が行う以上、実務運営上は担当者・地域の違いによって「ズレ」が出ます。そのため、「管轄の役所」に確認を取るのがもっとも早いのです。

確認を取る場合のコツとしては、①不明点はどんな小さなことでも確認する、②「だと思います」「ではないでしょうか」という曖昧な表現をされた場合、「間違いありません」といえるところまで確認する、③担当者の名前を控えておく、というものがあります。②はいわば言質を取るようなものですが、状況によっては確認しきれない場合がありますので、少なくとも①③だけは押さえておくべきでしょう。

このほか、役所以外に相談する相手としては、同業者です。同業者はライバルだからとあまり交流を持たない人も多いですが、実務で困ったときはやはりお互い様です。そういったことを相談し合える仲間をつくっておくこともひとつでしょう。私の場合は、事務所が近い行政書士の先輩に懇意にしていただき、相談させていただいていました。普段から同業者同士の人脈形成も重要な理由がここにあります。

ところで、ネット検索がまったく使えないかといえばそうでもありません。一部の書類を除いて、今は大多数の書類が行政のサイトからダウンロードできるようになっています。そのため、書類一式をそろえるために役所のサイトをブックマークしておくことはまたひとつ賢い活用方法だといえるでしょう。

イレギュラーな案件は、事前説明をしておこう

最後にもうひとつだけ実務上のテクニックを紹介します。イレギュラーな案件は、私たち専門家にとっても想定外のことであることがあります。しかし、お客様は「専門家はどんな案件にも対応できる」と考えていますので、普段ない案件に慌てふためくと信用度を落とすことになりかねません。

そこで、イレギュラーな案件、もしくはそうなりそうな予感がした場合には、正直に「今回のご依頼はあまり前例のないイレギュラーなものです。ですから、役所のほうも対応がわからないかもしれません。私も一所懸命仕事させていただきますので、ご協力をお願いできますか?」とお客様に一言伝えておくとよいでしょう。

この一言があるのとないのでは、仕事を遂行するにあたって思わぬ障害や時間経過があった場合に、お客様から専門家としての能力を疑われてしまう可能性があります。本来、こういったイレギュラーな案件まですべて押さえておくのが理想ですが、法律は毎年改正され、実務上の運営も刻々と変わります。そのため、最低限のリスクヘッジとしてこういった前置きをしておくのがよいといえるでしょう。

もちろん、いうまでもなく専門家としての日々の情報収集、知識の研鑽を怠ってよいという意味ではありません。私たちの仕事は、それでも追いつかない大変な仕事である、というだけです。

【POINT】調べ物はできるだけ管轄の役所に直接聞いてしまおう。ネット検索はあくまで参考程度に。困った場合のため、同業者のつながりもつくっておこう。そして、イレギュラーな案件は、お客様に事前説明をすることでリスクヘッジになる。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

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