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ベレッタうりの少女

「ベレッタいりませんか・・・ベレッタいりませんか・・・アメリカ軍で正式採用されM9ともよばれているすばらしい銃はいりませんか・・・」

 月のきれいな夜。寒空のした、ひとりの少女が町をあるいておりました。手にさげたかごにはいっぱいのベレッタ。これをうるのが少女の仕ごとのひとつなのでした。

「ベレッタいりませんか・・・ベレッタいりませんか・・・セイフティが左右両側についている上にマガジンキャッチを入れ替えられるので右利き左利きどちらの方でも対応できるすばらしい銃はいりませんか・・・」

 しかしだれも少女へみ向きもしません。

「死ねやオラァーッ!」「テメエが死ねやオラァーッ!」「兄貴ぃーっ!」「タマぁとったるぞゴルァァーッ!」

 それもそのはず、この町はいまヤクザとマフィアの全めんこう争のまっさい中だったのです。
 とびかうじゅう弾。はじけるば声。いままがり角のむこうでばく発したのはC4でしょうか。

「ベレッタいりませんか・・・ベレッタいりませんか・・・巧みなスライド形状造形によって排莢不良が起こりにくく作動信頼性が高いすばらしい銃はいりませんか・・・」

 てっか場のどまんなかをとぼとぼ進む少女。そのしょう面へ、よこの路じからヤクザふたりがとび出ました。路じのおくへけん銃ををうちまくりますが、すぐに弾ぎれます。

 舌うったヤクザたちはかけだそうとして、少女に気づきました。

「おうガキ! チャカよこさんかい!」
「ベレッタお買い上げですか?」
「アァ!? 寝ぼけとる場合かとっととよこせやダボが!」

 少女へつかみかかるみぎヤクザ。その背後から、おいかけてきたさん人のマフィアがいっせいにけん銃をかまえます。

「見つけたぞボケエ!」「死にさらせやド畜生があ!」
「クソが! だったら壁にでもなれガキ!」

 ち走った目のヤクザは少女を力まかせにマフィアたちへほうりなげます。少女のかおには、しかしおそれもおどろきもありません。

 少女は空ちゅうでくるりと一かい転し、はん動でベレッタ篭を上に投げました。自ゆうになったりょうてをうち振ると、そでのなかからあらわれたのはに挺のベレッタ。ちゃく地でスカートがふわふわとおどりますが、鋼てつの照星は微じんもぶれません。

 射撃。射げき。しゃ撃。しゃげき。射撃。射げき。しゃ撃。しゃげき。

 ヤクザとマフィア達のまんなかで、少女はくるくるとおどるように連ぞくでひきがねを引きました。

 悪漢どもは電きショックのようなぶざまなダンスをおどった後、もんどりうって倒れました。
 だれもかれものう天と体のどこかにふたつ以じょうのあなをあけられ、ふん水のようにあかいえき体をふき出しています。

 少女はそれらに目もくれず、に挺のけん銃を一ちょく線にかまえる形のざん身をおこないました。このかく闘技によって少女の攻げき効かは120%、ぼう御面では63%上昇していたのですね。

 機かい的なしぐさで、少女はたま切れのに挺ベレッタを捨てました。ちょく後、ふってきたベレッタ篭を少女はあぶなげなく受けとめます。

「どうやら町中にベレッタを買ってくれるお客さんはいないみたい」

 けん銃よりもなおつめたい目でもの言わぬ男たちを見回したのち、少女はきめました。

「ゴミ掃除で稼いだ方が手っ取り早いかも」

 この日、町のり権をねらってこう争をくりひろげていたふたつの組しきは、あと形もなくかい滅したのです。


めでたし めでたし


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