2023年10月12日 高祖さんエッセー「私と横尾ゼミ」
夏休み前に、横尾ゼミ1期生のみなさんにエッセーを書いてもらいました。
14人のエッセーはどれも秀逸でしたが、その中から、みんなに好評だった高祖さんのエッセーを公開します。
「私と横尾ゼミ」作:高祖(ゼミ1期生)
気候変動・脱炭素への興味
高校三年生の時、大学受験勉強に嫌気が差していた私は、将来この勉強が役に立つのか、この試験に合格して自分にとってどう有益なのだろうか、といった疑問から自分の将来について考えることが多くなった。
それまで勉強に多くの時間を費やしてきた人生であったため、特にこれがしたいといった望みも無く、生きる上での目標を見失っていた。世界に大きなインパクトを残したいと考えたりもしたが、無力な自分に果たして何ができるのだろうか、見当もつかなかった。
そんな思考を巡らせていると一つの記事に目が行った。内容は気候変動とビジネスについて。その記事を見る中で、自分の中で色々なものがつながっていく感覚を覚えた。
幼い頃から省エネに敏感な子どもだった。
倹約家の母親の影響もあり、電気をこまめに消すことや、シャワーを使っていない時に止めるといった節電、節水を徹底する生活習慣が染みついていた。幼少期に東日本大震災を経験し、電気や水の大切さを身に染みて感じていたことも大きいかもしれない。
またハイブリッド車にも目がなかった。他の車に比べて燃費が良かったからだ。変な子どもだと思われそうだが、数字が動くのを眺めるのが元々好きだった私は、気づけば車の燃費を気にする様になっていた。燃料を効率よく使う合理性にも、無意識に惹かれていたのかもしれない。
燃料電池車を知った時の衝撃は果てしないものだった。ハイブリッド車はガソリンを使うのに対し、そもそもガソリンが必要ない、走る時に水しか出さないという特徴に、素直に惹かれた。ただ、販売からしばらく経っても、街中でこの車を見かけることはなかった。なぜ誰もこの素晴らしい車を使わないのかと疑問を抱いたこともあった。
幼い頃よく見ていたサイトのイメージ:
そして省エネの話題から地球温暖化にも興味を持つようになっていた。当時メディアではその二つのことが同時に語られていたように思う。勧善懲悪ものが好きだった自分は地球温暖化に影響しているCO2を悪だと思うようになった。
同時に地球温暖化への恐怖心も大きくなった。記録的な大雨といった報道がなされるたびに地球温暖化が関連しているのではないかと思い、その度に恐怖を感じていた。
「なんで二酸化炭素減らされへんねん!」
と、テレビの前でお偉いさんたちに文句を言ったこともあった。今ではそれがどれだけ難しいことなのかを痛感させられているが。
そんな私は中学、高校で知識をつけていく中で、日本の経済が30年近く停滞したままであることに大きな問題意識を抱くようになった。
日本人として日本がとても好きで、誇りだ。
日本が世界でも「強い」国であって欲しい。
日本が次第に世界への影響力を弱めているという報道を目にすることが増え、経済を活発化させるには何が必要なのかと考える様になった。同時に、自分が日本経済を強くする一助になりたいと考えた。
そして受験勉強期間に見つけた記事が気候変動とビジネスについてだった。気候変動は環境問題で、ビジネスとはあまり関係がなく、行政が解決すべき問題だと思い込んでいた。ビジネスといえばIT企業で、第二のGoogleのような企業が必要ではないかと思っていた。
しかし気候変動はもはや政府や行政だけでは到底解決できない問題であり、脱炭素ビジネスは世界中で勃興していることも知った。とても大きな経済市場となりうることを認識したことで、以下のような結論に至った。
昔から興味のあった、解決すべきと思っていた気候変動(地球温暖化)に、日本経済を強くしながら取り組むことができる。自分が世界に大きなインパクトを残すことができる可能性もある。
志望大学に行けば、自分と同じ興味を持った人に出会える可能性も高まるかもしれない。そう考えただけで胸が高まり、受験勉強を続ける大きな原動力にもなった。
私と横尾ゼミ
脱炭素に関わり、日本経済を強くするという壮大な青写真は見えたものの、大学入学後しばらくは具体的に何をすれば良いのかわからず、特に何も行動を起こすことができずにいた。
そんな時に友達に紹介してもらったのがGreen Innovator Academyだった。多くの刺激をもらい、実際に脱炭素分野で活躍される方にも話を伺い、将来に対するイメージも少し深まった。同時に、今の自分にも何かできないかと考える様になった。
その繋がりで水素の社会実装を進めるために動いている団体にも参加し、少しずつ自発的な行動ができるようになってきたと感じていた。
そしてゼミ選考の時期を迎えた。入学から2年間で、経済学における各分野の特色を理解できていなかった自分には、どのゼミのシラバスを見ても、雑多な感想しか抱けなかった。
その中で開いたあるゼミのシラバスに心を奪われた。
「過去30年の日本では国内企業の国際的な存在感が低下し、その一方で温室効果ガスの排出量は増えつ戻りつという横ばい状態が続いています。
そのような時代に他国では産業構造のダイナミックな変化と社会全体の脱炭素化が急速に進んでいます。
2050年以降の日本とそこで暮らす未来世代に対して、脱炭素に成功した日本を、それでいて暮らしと仕事の糧となる産業のある日本を私たちは残せるでしょうか?
こういった問いに現代経済学の力で取り組みたい、といった関心のある方にぜひ来てほしいです。」
自分が描いたビジョンそのものとも言える文言が書かれていた。今年からの新設ゼミということにも縁を感じ、こんな文言を掲げるゼミには、同じ興味を持った人たちも集まるに違いないと思えた。経済学的な観点から気候変動に取り組めるようになれば、自身の価値を明確にすることもできると感じた。
横尾ゼミなら自分の熱量が尽きることはないと考えた。
そして現在、期待通りの環境のなかで私は学習することができている。
これからもその熱量を武器に、尊敬する先生と優秀な仲間とともに脱炭素と日本経済の成長を結びつけるために動いていきたい。
2023年7月 一橋大学・経済学部3年 高祖(横尾ゼミ1期生)
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