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「小麦」は「人間」より成功している!?

大学院も終わり、会合もリスケされている。というわけで、積ん読されていた本を切り崩している。

ベストセラーとなっている『サピエンス全史』。たしかに絶賛されるのがよくわかる。サクサクと読めて、いろいろな視点をくれるので、楽しい。

中でも私にとって白眉だったのは「農業革命は史上最大の詐欺で、生存と繁殖という、進化の基本的基準に照らすと、小麦は植物のうちでも地球の歴史上で指折りの成功を収めた」という上巻にある「農業革命の章」だろうか。

小麦は自らに有利な形でホモ・サピエンスを操り、(見方を変えれば)「私たちが小麦を栽培化したのではなく、小麦が私たちを家畜化した」という衝撃の一文。小麦の立場で人間を見たことはなかったが、たしかに。

現在、世界全体で「小麦」は日本の6倍に相当する面積の地表を覆っているらしい。ただの野草だったのに! 闘うことなく、自分たちで子孫を守り、育てることをせずに。人間がアシストし、勢力を拡大してもらっている状態。

狩猟をしていた時代に比べたら、手間と暇を省けるようになった農業革命だったが、それは果たして人間にとって成功を意味するのか? 前よりもゆとりある生活を送れるようになっているのか? 

私たちは「小麦」に縛られることで、いろいろなものを失っていった事実が小気味良く提示されていく(ちなみに、感染症の発生は農業革命がおこり、人間が定住するようになったことに端を発するとの指摘)。議論は深まり、「小さな変化が積み重なって社会を変えるまでには何世代もかかり、社会が変わった頃には、かつて違う暮しをしていたことを思い出せる人はいなくなる」「贅沢(あるいは、便利)品は必需品になり、慣れてしまうと義務になる」と警鐘を鳴らす。

今朝、私はトーストを食べた。昨日はパスタを食べた。

支配しているようで、されている。小麦の立場から見たら、そんな私を見て「高笑い」だなと苦笑い。

今日のもう一冊

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