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亡き父との対峙

この4連休中、亡父のアトリエをひたすら片付け続けているが、まったく終わりが見えてこない。

倉庫の段ボールを開けてみると、大量のネガと紙焼き写真が出てきて唖然とする。とりたてて父の趣味が「写真を撮ること」だと思っていなかったが、あまりの量に驚く。明らかに写真が趣味だったようだ。とはいえ、撮影した写真をウットリ眺めるようなことはなかったようで、とにかく大量に撮り続けていたことだけがうかがえる。

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現像されていた写真の仕分けをしてみているが、まったく時系列が見えてこない。たまに「おっ!」と思う写真もあるが、その打率は極めて低い(苦笑)。もし、この打率が高かったら、亡くなってから評価されたことで知られるヴィヴィアン・マイヤーのように、私がひと肌脱がなくもないけれど、その必要はなさそうだ。

奇跡は、ある若者がわずか380ドルで落札したネガ・フィルムの詰まった箱を手に入れたことから始まった。2007年、シカゴ在住の青年がオークションで大量の古い写真のネガを手に入れた。その一部をブログにアップしたところ、熱狂的な賛辞が次から次へと寄せられた。この発見を世界の主要メディアが絶賛!発売された写真集は全米売上No.1を記録、NY・パリ・ロンドンでいち早く展覧会が開かれるや人々が押し寄せた。撮影者の名はヴィヴィアン・マイヤー。すでに故人で、職業は元ナニー(乳母)。15万枚以上の作品を残しながら、生前1枚も公表することがなかった。ナニーをしていた女性がなぜこれほど優れた写真が撮れたのか?なぜ誰にも作品を見せなかったのか?(HPあらすじより)

そして、倉庫の中から『ランヴルフィッシュ』のポスターが。ついぞ映画の話などしたことがなかったが、私と父親の映画の趣味はとても合っていたのかもしれない。

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そして、父の日記帳が出てきた。父は緻密な字を書く。例えるなら、映画の字幕のような、東海林さだお先生のような。どうやら17歳の頃の日記帳だ。私が知っている父の筆跡そのままで、その日起きたことや感じたことがビッシリ書き込まれている。

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まるで太宰治のように自身に陶酔し、苦悶する一人の17歳の若者の肉声が込められている。

これまで、もちろん父を父としてしか見たことがなかった。けれど、同じ年齢で出会っていたら、激論を交わしていた相手だったような気がする。

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