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今こそ考える。「メイク」は何のため?

ファッションやカルチャー系読み物ページもつくってきたが、「何を専門に?」と聞かれれば「美容です」と答えるのが無難なほどには美容エディターのキャリアを積んできた。これまでに、たくさんの商品に触れ、美を生み出すアーティストの方々の技を近くで観察し、誌面を飾るたくさんの美しい方々に会ってきた。20数年の間、それぞれの媒体に合ったメイクトレンドをキャッチし、提案してきたとも思う。

しかしながら、そんな絶好の場所に長いこといるにもかかわらず、悲しいかな、自分に対してのメイク魂に火がつくことがほとんどないままに、今にいたる。そして、この度の外出自粛要請。あぁ、わずかながらに存在する私のメイク魂の灯火さえも危うくなる。

Z世代のメイク魂

ゼンデイヤが主演、ラッパーのドレイクがプロデュース、HBと気鋭スタジオのA24がタッグを組んだ『ユーフォリア』のシーズン1を観た。幸福感、多幸感を意味するタイトルだが、ドラッグやセックス、バイオレンスに溺れるティーンエイジャーのリアルな日常が綴られている。未来が見えない、どこに向かっているのかも分からないゆえに、何かに依存せざるをえない若者たち。「絶望的なほどにリアル!」と絶賛されている。始めは遠くに感じていた登場人物ひとりひとりに、最後はドップリと感情移入してしまった。


と、ドラマの内容についても、書き連ねたいところであるが、今回はメイクに注目。

いや〜、とにかくグラムで退廃的なメイクが抜群に目を引くドラマであった。話が頭に入ってこないくらい、「楽しくなければメイクじゃない」というメッセージが詰まっていた。

以下、メイク担当のドニエラ・デイヴィーのインスタグラムよりピックアップ。





VOGUEのインタビューに掲載されていたドニエラ氏のインタビューより。

「ティーンたちは常に新しいことを試している。彼らは自分を表現するためだけにメイクをするのではなく、その日、自分が何になりたいかをメイクで表現しているの」
定型的な美の定義やメイクアップの常識を超えて、普段テレビでは見ないようなまったく新しいスタイルを打ち出すことに挑戦したわ。まさに、リアルなジェネレーションZのインスタグラムでしか見られないような『新しい美しさ』をね!」

instgramで見つけたロンドンのアーティストzoeの自由なメイクも個人的お気に入り。作品の世界観ともリンク‼︎


名画を真似る

#tussenkunstenquarantaine  のハッシュタグを検索すれば、世界中の人が名画を自宅で再現している投稿が見られる。肖像画は、メイクを駆使する必要があるので、もう、顔がキャンパスである。言うなれば、模写メイク。何者かになる、という喜び。これも、また、ひとつのレジャーとして大いにアリ!



私ってかわいい

昨日、仕事仲間とのライングループでの「いや〜、りゅうちぇるの動画に元気もらったわ」というやりとり。動画で「僕ってこんなに可愛い」を連呼しているわけなのだが、ま〜、癒される。「家からほぼ出ないとメイクなんて絶対しないけれど、メイクをバシッと決めて自分のテンションを自分でブチ上げるってことも必要だね」「そうだね、そうだね」などとメッセージを送り合った。


というわけで

メイクする理由は、「社会人としてのマナー」「モテるための武装」「自己肯定感をアップさせるため」……と人それぞれだと思う。それらが、エイジズムやルッキズム、セクシズムなどの問題と絡み合い、より複雑に語られることも多くなっているのも事実。

でも、こんなに鬱々とした日々を過ごすことになった今、改めて思うのだ。

ええい、難しいことはひとまずよけといて、自分の気持ちをグイッと持ち上げるためのひとつのアイデアとして、メイクという戦術をもっておくととても便利。それは間違いないわけで!

自分のために自分のメイクを楽しむ絶好の機会。発信するのも、練習するのも、ひとりごちるのも、また一興。

まず、私は気分が上がるネイルを塗ってみることにする。


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