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インタビュー記事づくりで考えていること

昔からインタビュー記事を読むのが好きだった。ミュージシャンやスポーツ選手の思考の導線や普段目にできるアウトプットだけでは想像もつかないような苦悩や葛藤を知りたがった。きっと「きらびやかな表舞台で見せてくれる顔の裏側を私は知っているよ」という自己満足に陶酔することが好きだったんだと思う。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の制作過程を追ったドキュメンタリーの中で、庵野秀明監督は「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきてる」と、以前は断っていた密着取材を受けた理由を語った。最近、テレビ番組も、演者の本心や考えていることを語らせるものが増えてきた(トーク番組だと予算が少なくて済むという算段もあるのでしょうが)。

人は舞台裏を見たくなる。人の気持ちの奥を覗きたくなる。

最近、インタビュー記事の担当をした、ぼる塾の田辺さんとニューヨーク屋敷さんが同じようなことを口にした。

田辺さん私の中でポリシーがあるんですよ。自分が思ってないと嘘がばれちゃうし。なんに対してもそうなんです。ある人のことをイケメンって言わないといけないときがあったんですけど、自分がそう思ってないから『言えません』って言ったら怒られたこともありました」
屋敷さん「好感度はたしかにヘンに上がると落ちた時、田舎のおかんとかが可哀想なんで、ヘンに上がらんほうがええかなと思いますね。とりあえず、嘘つかんようにしたいです。嘘つくのは良くないですよね。ウケるの優先で思ってないことを言うのも辞めたいです。芸人の癖で言うてまうときもあるんですけど、嘘をつかずに売れたらいいなと思います

読み手の欲求に寄せることに苦心しすぎると、取材対象者が置き去りになってしまうことがある。思考を言語化した時点で本人の頭の中とのズレをゼロにすることは不可能ではあるけれど、できるかぎり極力小さくなるように。「嘘をつきたくない」と語る取材対象者の方達のインタビュー記事を、こちらの思惑でご本人たちから乖離させないように。

人の心情を簡単にわかろうとすることも、すぐにわからせようとすることも随分と乱暴の話だ。個人的にエモさ盛り盛りの文章をこれまで愛してきただけにいっそう注意深く。大坂なおみ選手のメンタルヘルスの件もあり、いっそう考えるようになった。


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