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読書日記

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2020年8月の記事一覧

「世間体」という戒律が厳しい社会のこと

「テニスより重要」と、警官による黒人男性銃撃事件に対し、抗議に同調する声明文を自身のSNSに投稿し、ウエスタン・アンド・サザン・オープン(ニューヨーク)の準決勝を棄権した大坂なおみ選手。 一転、準決勝出場を決めたとの報道が! 本当に強い! 圧倒的に支持。 ノリにのっている時期にお預けになっていた半年ぶりの試合。「とても楽しみにしている」とインタビューにも答えていた大会で、「準決勝に出ないという判断」を大坂選手が選択したこと。 そして、「自分に注目が集まったから、逆に出

ムダかどうかは、自分で決める。

剃刀などのビューティツールを発売する貝印の新しい広告のコピーだ。キャンペーンモデルは、バーチャルヒューマン。電車内の「ムダ毛は絶対悪」と言わんばかりの脱毛推進広告を見つめる度に、「ここまで圧をかけてこなくても」とずっと思ってきたので、「遂にきた!」と純粋に思った広告である。 そして、貝印が同時に発表した「ムダ毛に対するアンケート」を眺めると、まだまだこのメッセージは前衛的すぎるかもしれない、と思ってしまったりもする。けれど、メッセージを発信することはとても大切なことだ。

初心を思い出す。だから、女は大変だ

音楽誌、漫画誌、ファッション誌、カルチャー誌…学生時代は雑誌からたくさんのことを学んだ。その中で、「私も作る側にまわりたい!」と強く思わせてくれた一番の存在は、雑誌『CREA』だったような気がする。 当時の『CREA』は、メインカルチャーとサブカルチャーを縦横無尽にかけめぐっているのが楽しく、ページをめくるごとの意外性がずば抜けていたような気がするからだ。毎号、闇鍋のような雰囲気があった。今思い返せば、いろいろな情報を与えてくれる雑誌はたくさんあったけれど、いろいろな視点を

オリンピックの閉会式だったはずの日に

本当なら、今日は東京オリンピック閉会式だった。 私はスポーツをするのも、観るのも好きだし、アスリートを応援したい気持ちもある。 けれど、東京オリンピック開催には疑問しかなかった。約2週間のスポーツイベント開催に、これほどまでの莫大な資金を浪費することはもちろん、その中・長期的リターン回収にこれまでの開催国がほぼ失敗しているのに!? 戦後、平和的なメッセージを国際社会に発信し、技術力や経済的な潜在能力をアピールする絶好の機会だと捉えた1964年大会と同じような気持ちで

「新しい暮らし」に思いを馳せる

「世界はどっちの方向に向かうのかな〜」と考えることが多くなった。 以前読んで感銘を受けたマーク・フィッシャーの『資本主義リアリズム』を読み返した。 資本主義の終わりより、世界の終わりを想像する方がたやすい このスローガンが、資本主義リアリズムの意味を的確に捉えるものだと筆者は語る。「あらゆる存在が金銭的観点のみによって評価されるという極めて不平等で残酷な事態が私たちの理想状態として提示されている。その状態は、本当に健全なのだろうか?」という問いかけがなされているが、その