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読書日記

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2020年3月の記事一覧

人間は「ピーク」と「エンド」しか覚えていない

『Think clearly』によれば、私たちが感じる「瞬間」の長さは、心理学者たちによれば「約3秒間」であるらしい。 ノーベル賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンが定義づけた「ピーク・エンドの法則」。 何かを体験したとき、おもに私たちの記憶に残るのは、その出来事の一番印象深い「ピーク」部分と、その「終わり」だけなのだ。それ以外のことは、ほぼ記憶に残らない。体験する出来事の「長さ」さえ、脳の認識には影響を与えない。 今、私たちは皆でゴールが見えない、距離すら分から

貨幣は鋳造された自由である(商品券ではダメなのだ)

タイトルはドフトエフスキーの言葉。さらに、 もちろん金は絶対的な力である。と同時に、平等の極致でもある。金の持つ偉大な力は、まさにそこにあるのだ。金はすべての不平等を平等にする。〜『未成年』より〜 とも言った。 そして、昨日のニュース。 和牛の商品券??? あまりにも限定的。 旅行代助成も、百貨店商品券もしかり。 お金(を支給すること)の最大のメリットは、「その自由さにあり、そして、平等である」ところなのだと思う。商品券や特定のものにしか効力を発揮しない助成金では

最も個人的なことが最もクリエイティブだ。モーメント・ジューン‼︎

数日前にアルバムをリリースし話題になっているラッパー「MOOMENT JOON(モーメント・ジューン)」を夫に教えてもらう。聴いた途端にハマり、もう何回も聴き返している。 いくつかインタビューも読んだ。 韓国での懲兵体験や日本での差別、恋人との日常など、自らの経験を落とし込んだ歌詞には現代社会が向き合うべきリアルが含まれている。 わかりやすい差別だけではなくて、文化の違いから生じる人と人の心の溝、国家権力によって崩れる生活など、逃げたくも逃げられないものが自分の生活に入

スカパラの“じゃんけん関係”チームビルド

私はフェスが好きで、たくさんのフェスに足を運ぶ。そこで、いつも思うことがある。生まれ変わったら、スカパラに入りたい。※ヘッダーは、オフィシャルHPより。 たとえ、どんなにユル〜いフェスでも、彼らがいれば大団円。いつでも気分を爆上げしてくれる。そして、とにかく彼らはいつも楽しそうだ。人を楽しませる人は、自分も楽しんでいる人である。見ていて、それがよく分かるバンドだと思う。 ライジングさんロックフェスティバルの20周年の大トリがスカパラ。きっと大変なことになるとは思っていまし

自由からの逃走。映画『ミッドサマー』考、再び

ホラー耐性がまったくないにも関わらず、覚悟しないままにノリで観てしまった『ミッドサマー』。 「なんだか不思議と爽快感があったー!」と伝えたら、「まったくハマれなかった」とぼやく知人がチラホラ。ハマる人と空振りする人がいる。その差とは何なのかと、ずっともんやり考えていたところに、ひとつの名回答記事が。 元カルト信者の方による「私がかつて経験したことが非常にリアルに再現されていた」という『ミッドサマー』レビュー。 ホルガ村やカルト宗教のような共同体は、結局のところ、多様性を

政治、教育、公共施設……いつだって目的は遠くに

三寒四温。桜が一気に咲き誇りそうな陽気が続いたかと思えば、昨日は東京にまさかの雪。あまりの寒さに、家に閉じこもり、読書をしていたが、なんだかサワサワ。 気になったニュースやつぶやきをサーフィンしてしまう。※ヘッダーは記事中のハリル氏のTwitterより。 各国の哲学 イギリスは新型コロナウィルスを封じ込めるのではなく、免疫を持つ人が一定割合まで増え、感染を防ぐようになる「集団免疫」を国民が獲得するまでやりすごす作戦に出るらしい。 イギリスは「封じ込め」フェーズから感染の

『アメトーーク』神回に見た時代の潮目と“ほとちゃん型”リーダーシップ

毎週、『アメトーーク』は録画し、自分が好きなテーマを選んで観ている。唯一、民放で自動録画しているお笑い番組だ。 2人MCだった番組が蛍原さんひとりとなってしばらく経つが、ここしばらくは本当に良い空気になっているな、となんとなく感じていた。 そして、昨夜の神回(私調べ)。 テーマは「トリオの2番手3番手芸人」。トリオの「顔」である1番手は、MC蛍原さん(以下、ほとちゃん)の横で2番手・3番手と評されるメンバーの話を聞き、ツッコミor分析役にまわる。※ヘッダーの写真は公式T

メキシコでは女性のストライキ。国際女性デー、あれやこれや

今日は、国際女性デー。 朝からテレビをつけているが、新型ウィルスの話題一色で、国際女性デーに触れた番組はなかったように思う。 イタリアは「ミモザの日」。「FESTA DELLA DONNA(フェスタ・デラ・ドンナ=女性の日)」とし、男性が日頃の感謝を込めて、母親や妻、会社の同僚などに愛や幸福の象徴でもあるミモザを贈る。女性たちは家事や育児から解放され、束の間の自由を楽しむ日とされている(Happy womanより)。 ロシアでは、特殊部隊が国際女性デーに花を配って歩くら

音楽、ダンス、フットボール。「多様性」問題の突破口は、お祭り⁉︎

ジャン・ヴァルジャンも出てこない。パンも盗まれない。 映画『レ・ミゼラブル』も、ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』の舞台となったパリ郊外のモンフェルメイユが舞台。今や移民や低所得者が多く住む犯罪多発地域。現在の「レ・ミゼラブル(悲惨な人々)」が描かれる。 映画『レ・ミゼラブル』=フットボール私たちが考えるフランス、特にパリのイメージとは一線を画す。フランスの格差社会、人種差別問題が詳らかになる。モンフェルメイユは、人種、宗教、職種、そして世代……いろいろな要素で分断され

『セックス・アンド・ザ・シティ』の功罪

修士論文を書くにあたり、気になるフェミニズムの本を手当たり次第に読んでいた時期がある。 その中の一冊『韓国フェミニズムと私たち』。 その中にコミュニケーションディレクターをしているキム・ジナさんのインタビューが掲載されている。 私はX世代、「セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)」世代なので、フェミニズムには全然関心がなかったんです。成功することへの欲は昔からありましたが、女性が成功する姿がどういうものかわからなくて、メディアに出ているような、ブランドのバッグを男性か

「小麦」は「人間」より成功している!?

大学院も終わり、会合もリスケされている。というわけで、積ん読されていた本を切り崩している。 ベストセラーとなっている『サピエンス全史』。たしかに絶賛されるのがよくわかる。サクサクと読めて、いろいろな視点をくれるので、楽しい。 中でも私にとって白眉だったのは「農業革命は史上最大の詐欺で、生存と繁殖という、進化の基本的基準に照らすと、小麦は植物のうちでも地球の歴史上で指折りの成功を収めた」という上巻にある「農業革命の章」だろうか。 小麦は自らに有利な形でホモ・サピエンスを操