バリ島でアーユルヴェーダ・パンチャカルマ5日目
7時にトリートメント室へ向かう。セラピストから、今日行われるヴィレーチャナと言われる下剤を使ったクレンジングについて説明を受けた。まず錠剤を飲み、スチームバスに入る。そして15分ほど体を温めたら、粉末ハーブを溶かした薬草液を飲む。そして自室に帰り「その時」を待つとのことだった。このクレンジングを受ける前に、体験談を探して読んだが、薬草由来の下剤の効き目はゆるやかで、とても気持ちが良かったとあった。この後自分の身に起こることの心配は一切していなかった。ははは。
スチームバスもハーブの薬を飲むのも終えて、自室に帰った。ベッドに横になったときにはすでに、胸がムカムカして気持ち悪かった。1時間後くらいに来ると聞いていたが、30分もたたずにその瞬間がやってきた。
お通じの回数を記録するようにと言われていたので、スマホを片手にトイレに駆け込んだ。そこから1時間半爆撃を受け続けたような時間だった。最初固形のものが出てからはずっと水便が出た。そして嘔吐も3回ほどあった。とにかくお腹が切り裂かれるように痛い。もう痛すぎて痛すぎて、気づいたら大量の汗をかいていた。ずぶ濡れの雨に打たれたくらい頭からしずくがぼたぼた落ちてくるし、着ていたTシャツはびしょ濡れで肌に張り付く。意識が飛びそうになるくらいの苦痛の中、必死にスマホを握りしめ、実況中継をする。
合計で27回お通じがあった(一度のお通じの後、4秒間空白の時間があれば次に出てくるのは2回目とカウントする)。途中でベッドに戻るも、体中の穴から何かが噴き出しそうになる感覚がして、這ってトイレに戻ったりもした。人生で一番つらかった1時間半だった。体にある穴という穴すべて全開で、それでも体内から体外に出ていこうとする私の中にいたヤツ共の勢いが強く、本当に壊れてしまうのではと思った。こんな思いをするなんて、パンチャカルマなんてするんじゃなかった、とトイレの中で何度も後悔した。
1時間半の戦いを終え、ベッドに横たわり放心状態になる。水分もかなり失い脱水症状も出ていたかもしれない。でも空っぽになった体にお水を入れるのもしんどい、吐きそうになる。セラピストが部屋まで様子を見に来てくれた。出し切った私は青白い顔で、うなずくしかできない。汗をかきまくったせいか寒て仕方ない。30度を超えるいいお天気のバリ島で、布団にくるまって震えているのは私だけだろう。寒いのねと彼女は言って湯たんぽを用意してくれた。あったかい。お腹がホカホカとあったまり、焼け野原と化した体の内部がゆっくりと脱力していくのがわかる。夏日のバリ島で湯たんぽを愛おしいと思っているのは私だけだろう。
このまま1時間ほど放心状態で休む。やっと水が飲めるようになった。ドクターが様子を見に来た。かすれた声で「done…」とだけつぶやいた。ドクターは何回お通じがあったかと尋ねる、27回と答えたら、もう十分だといい、お通じを止めるための液体を私に飲ませた。これで本当に終わったんだと涙が出た。今日はゆっくりとにかく休むように言われた。
人生で一番つらいトイレタイムを経験し、死ぬほどつらくてげっそり疲れたけど、1時間もベッドで横になると意識がクリアになってきたのがわかる。空っぽの体でパワーはないのだけど、体内に「平和」を感じる。ココナッツウォーターで水分補給をしながら、涙が出てきた。クリンジングの苛烈さは、私が今まで抱えてきた毒を表しているような気がした。私めっちゃ頑張ってたんや、いっぱい悪いもんを抱えてたんだね。出した今だからこそわかる。本当私の身体よく頑張ってきたね。ありがとう。
死ぬと思っていたけれど昼過ぎにはお腹が空き、おかゆを食べた。空っぽな身体にやさしい味のおかゆが染みていく。死ぬわ! と思っても、パンチャカルマを恨んでも、お腹が空いてまた食べるのだからおもしろい。自分の体の純粋さに感動して、また泣けてくる。
想像の100億倍辛かったビッグクレンジング。本当にパンチャカルマの施術の感じ方は人それぞれだと思った。私くらい辛い人は、周りの参加者に聞いてもいなかったから。一生しない! と直後は思っていたが、確実に身体から心から不要なものが抜けた。一人ではここの境地までたどり着けなかっただろう。ドクターにもセラピストにもバリの地にも、今吸っている空気にも感謝しかないと思って眠りについた
明日からはこの空っぽな身体にゆっくりと栄養を注ぎ、パワーを戻していく次の段階へ進む。クリーンになった直後が1番大事。どんな施術を受けるのか楽しみだ。
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