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中国から来た、うるさい旅人たちが教えてくれた「自分らしい旅」

日常から離れ、非日常へ。

いつもとは違う場所でゆっくり過ごしたい。そして美しい景色をカメラに納め、おいしいご当地料理を食べて。

その場に溶け込むように、静かに感情を味わうべき。それが旅ってもの。



−−−

「你怎麽那拍拍那辺麽来啊好吃走吧~爸~多少很舒服不行但要!!!!!

バスのブレーキが聞こえ、ドアが開き、カラフルな洋服を着て(赤かピンク率高)サンバイザーをかぶったおばちゃん軍団がやってきた。

静かな史蹟を見て、悠久の歴史に思いを馳せていたその時、中国のおばちゃん軍団がきて「はぁっ。うるさっ」とため息をついたことがあるの、私だけじゃないですよね?

それが中国本土であっても、日本であっても、東南アジアであっても、ヨーロッパでも、アメリカでも。そうどこでも。彼らはやってくる。


せっかく時間を作って、お金をかけて実現した私の非日常を噛みしめる旅を一刀両断にする中国人団体観光客がキライでしょうがなかった。一瞬にしてムードをぶち壊すやかましさ。うるささ。にぎやかさ。

異国情緒を味わいに来たのに、これじゃヨドバシカメラの炊飯器売り場と変わらないじゃないかって。



観光バスが停まる旅に、心臓がバクバクする。あぁぁぁぁ、あの最強なおばはん軍団 from 中国がやってきたらどうしよう。これで私の静謐な旅はTHE ENDだ。ううう涙、とね。



そんな、中国のおばちゃんたちに圧倒的苦手意識を持っていた私。それがこのラオスのルアンパバーン旅行では少し違った。

昨日、ルアンパバーンで一番有名なサンセットスポットに行った。私はいつものごとく何も決めずに旅先に着き、何も考えずに歩いていた。そのとき丘へ登る階段を見つけ、なんだここは? と思い上ってみたのだ。

私が丘の頂上についたときはまだ誰もいなくて、そなえつけてあったベンチに座り、頭を空っぽにしながらメコン川を眺めていた。

陽が傾くにつれ、人が増えてくる。どうしてなのか? グーグルマップを開いてみて初めて気づく。おお、ここはサンセットスポットなのね。

もう丘に昇り、ベンチに座ってから1時間以上経っていた。ここまで来たのだから、陽が落ちるまでここで待ってみよう。そう思ったときだった。

「你怎麽那拍拍那辺麽来啊好吃走吧~爸~多少很舒服不行要

ドシドシど階段を上がってくる音がする。

k、き、きた…。
やつらがやってきた。

これで私の旅は終わったと思った。


いつもの通り、中国からきた観光客の皆さんは大きな声で騒いで、写真を撮るのに忙しそうにしていた。それまでいろんな国の人達が静かに夕陽を待っていた、あたりのムードを容赦なしに壊していく。

いつもなら、うるさいなー。

と思って終わりだったのだが、昨日の私は少し違った。


いつものように目をそむけて、ここに中国人の団体観光客はいない…いない…と念仏を唱えるのをやめた。振り返って、直視してみたのだ。

うわぁぁぁ。

めっちゃ楽しそう。彼らは異国の地に来たことを純粋に喜び、この丘にいる誰よりも楽しそうにしていた。

そうして自分が感じた感情をただ言葉にして、周りの仲間と共有していた。


これまで幾度となく遭遇してきた中国からきた旅人と、初めて向き合って。なんだか私は恥ずかしさを感じた。

正しい旅なんてないのに。

静かに夕陽を眺めなくちゃいけないなんて、誰が決めたんだろう。

誰が?
私が勝手に決めただけじゃん。

楽しんだら良い。ただただ、楽しんだらいいじゃん。


その地の文化を尊重して、邪魔にならないように気をつけることは大切だ。でも必要以上に旅の楽しみ方を「こうあるべき」なんて決めつけてしまうのは、もったいないことなのかも。

本当に夕陽がきれいだ。今度は娘と来たい。お腹が空いた、今晩何、食べよう?とちょっぴり大きな声で嬉しそうに話す中国からきた旅人。

彼らを見て、私も私の旅をしてみようって。そんな風に思った。


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