事業化のヒント〜インサイト探しをやってみた

NPO法人1年生のヨーコです。最近仕事でもNPOの事業化検討でも気になっているキーワードの一つが「インサイト」です。ご存知ですか?

人が行動しやすくするには

会社の仕事では、人が行動しやすくなる環境づくりを考える行動デザインを専門にしています。中心となる問いは「どうすれば人は行動しやすくなるか」です。その時、意思決定プロセスにもとづいて「行動しにくい要因」(ボトルネック)を分析します。目指す行動までのプロセスを分析しますので、カスタマージャーニーに近いかもしれません。
・認知:情報をキャッチする入り口(口コミやUGC(SNS)、チラシなど)
・関心:興味を持つ
・選択:やってみようと思う、検索したり人に聞く
・意思決定:行動すると決める(行く、申し込む、購入するなど)

各ステップで行動しない理由を個人要因と環境要因をできるだけ網羅的に洗い出すのですが、そのソースは調査報告や各種アンケート、論文で検証されたエビデンスなどの客観情報を使い、コンサルタントらしく論理的に分析していました。

ただその要因は本質的なのか、行動のスイッチを押せるのかという点がずっと疑問で「心」や「脳」に着目するようになりました。人の意思決定は9割が無意識・反射的に行われており、残りの1割が意識的・熟慮して行われているそうです。

つまり、そもそも興味がないものや生活の優先順位が高くないものは反射的に脳が選択しない(選択することは脳に負荷がかかるので、デフォルトは選択しない)のです。となると、作戦は反射的に選択してもらいやすくする・ 熟慮するに値することだと理解してもらいやすくする、となります。

インサイトに着目した

そのアプローチとして、ナッジや仕掛学、人間工学に関心を持ってきたのですが、最近注目しているのがインサイトです。「人を動かす隠れた心理」と言う意味だそうです。

行動しない理由を探るには、アンケートやデプスインタビューで聞くことが一般的に行われています。でも、「なぜ投票しなかったのですか」「なぜ健康診断を受けないのですか」など正面から聞かれても、反射的に「しない選択」をしているので後付けの理由にしかならない(それっぽい理由)という課題があります。

他には、ビッグデータを使ってデータ解析を行い、行動から意図を読み解くことや行動観察(エスノグラフィ)のアプローチもあります。

これに対してインサイトは「行動しない理由」「行動する理由」の奥底にある気持ちを掘り下げていき、心のスイッチを見つけるアプローチ(投影法)と解釈しています。まだ勉強を始めたばかりなので、浅い理解かもしれませんが・・・。

対象者になりきり、心の奥底で感じている感情や気持ちを明らかにしていく投影法はとても主観的。行動しない要因を客観的に分析していた私にはそれでいいのだろうかという躊躇が正直ありましたが、人は主に無意識・反射的に行動しているのなら、心や身体の軸を知る必要があると思い直しました。

事業アイディア創出で一人ワークショップ

インサイト抽出をやってみよう!と思ったところでどこからどう手をつけていいか分からない。いろいろ検索して手に取った書籍がコチラ。インサイト発見からプロボジション(インサイトを踏まえた施策)、実施プランの作り方までのプロセスとその過程で使う各種ツールを丁寧に解説。ワークショップの実例の紹介もあり、かなりリアルにイメージできました。

さあ、やってみよう!対象者に実際にやってみてもらう・語ってもらうのが王道でしょうが、その前に自分やプロジェクトメンバーでシミュレーションしてみることが勧められていましたので、まずが一人ワークショップをやってみました。

今の事業課題の一つは、地域の子どもに関わる大人(まちのおや)へのオファリング。どのような価値を提供すれば大人が集まり、地域の子どもに関わりやすくなるか。そこで、一人ワークショップのゴールをターゲットを決めてインサイトを抽出するところまでやってみました。

これまでの所謂「子育て支援」現場に足を向けることはないが地域の子どもに関わってほしいターゲットとして、(1)独身20代・30代男性、(2)子育て真っ只中からひと段落した40代から60代男性、(3)子育て真っ只中の30代パパを考えてみました。

使ったツールは、先ほど紹介した本のインサイト発見ツール1:ユーザーお絵描きと吹き出し。心の声を吹き出しに書くことで、その行動をとる本当の動機や心理的バリアを把握する、と説明されています。ポイントは対照的な2人の会話を作ることです。私の場合は、同じカテゴリーで地域の子どもに関わる人と関わらない人

それぞれの人の年齢、体型、髪型、服装、興味、性格、日々の話題などを想定してリアルな人を思い浮かべ、特徴がわかる程度の絵を描きます。そして、関わっている側から関わっていない側に、お誘いの言葉を吹き出しに書きます。次に、受け答えの言葉を相手の吹き出しに書きます。そして、ここがポイントなのですが、口に出さないけれど心で思っていることを両者の雲の吹き出しに書いていきます。ここが深層心理にあたる部分です。

じゃんじゃん書いているうちに、思ってもみなかったその人の気持ち(インサイト)が浮かび上がってきました。

(1)独身20代・30代男性
・関わる人:自分が誰かの役に立っている手応えがある
・関わらない人:デキる男になることに関係ない。子どもと遊ぶヒマもないし面倒

(2)子育て真っ只中からひと段落した40代から60代男性
・関わる人:自分の子どもにできなかったことをやってあげたい
・関わらない人:今更地域の子どもに関わっても仕方ない

(3)子育て真っ只中の30代パパ
・関わる人:自分の子どもの成長につながることで妻と違う家庭の役割を果たしたい
・関わらない人:自分の子どもにいいことはやってあげたいが、できる人にお任せしたい

インサイトを深掘りしてキーインサイト(人を動かす中心の気持ち)までたどり着くことは限られた時間と視点なのでできていません。でも次は、できればプロボノのチームメイトとワークショップをやってみて、多くのインサイトからキーインサイトを出して、心のスイッチを押す提案(プロポジション)を一緒に考えてみたいと思います。


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