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猫の恩返し

なおみは昨年11月30日、午後4時40分頃に亡くなりました。今日が5回目の月命日です。

「よく生きました。また会おうね」と呼びかけると、ウォーンと答え、数回息をして、静かに旅立って行きました。意思の疎通が取れる不思議な猫でした。

福猫なおみ https://note.com/yokokko/n/n59e065b6d376

福猫なおみ2〜皮下点滴始まる https://note.com/yokokko/n/nd14fd38addd8

亡くなる4日前、26日の朝、出張に出かけるわたしを珍しくお見送りしたなおみ。

その頃は腎不全が進行し食欲も減り、皮下点滴200ccは36時間おき、体重も日に日に減って1.65kgと、うちに来た時よりも痩せてしまっていました。

出張日の朝には後ろ足が弱っているのがわかったので、もしかしたらこれが最後になるかもと、「3つ寝たら帰ってくるからね」としっかり伝えて、彼女の姿を脳裏に焼き付けて家を出ました。

出張中は動物病院で点滴を打ってもらい、帰宅するまではなんとか食べていたそうです。

無事に帰宅したわたしの顔を見て安心したのか、以後まったく食事を取らなくなりました。その夜は点滴をして一緒に休みましたが、いつものように胸の上には乗って来ませんでした。

なおみは夜中に2度トイレに起き、わたしの頭にくっつくように体を添えたり、腕まくらをせがんだりして、3日ぶりに過ごす時間を楽しんでいるようでした。

翌朝はなめる程度に水を飲み、マカロンの形のベッドの中でずっと寝ていました。気になって何度か声をかけた時には、にゃーと返事。お昼には1人でトイレに行きました。

暗いところに入っていこうとするので、いよいよお別れが近づいたと覚悟して、ずっと近くにいました。16時頃に息が荒くなったのに気づき、顔の下にタオルを敷いて息をしやすくし、

17時からZoomがあったので、16時30分頃に「5時になったら1時間は一緒にいられないよ。それまではついていてあげるから、行けるなら行ったらいいよ」と声に出さず伝えました。

きっとわかったのでしょう。

なおみと一緒に過ごした2年と3ヶ月は、生活すべて、彼女が中心でした。
「なんでわたしがこんなことをしているのだろう?」と思うことも、何度もありました。

点滴の針を刺すときに背中の肉をつまみ上げますが、肉がないと刺した針が反対側に突き抜けることがあります。

うちに来てから体重が増え、点滴を開始した頃には針を根元まで刺せていました。でも痩せてしまうと、針の2〜3分の1程度しか入らなくなり、時に嫌がって途中で逃げようとします。

針を刺すたびに、ロンドンで飼い猫の安楽死を勧められたときの獣医師に「痩せて肉が落ちると、針を刺すときに痛みを感じストレスを与える」と言われたことを思い出しました。

苦しめているのではないかという罪悪感でいっぱいで、嫌がるときは謝りながら点滴を続けました。

今でも自分のしてきたことが良かったのか、わかりません。

そして今になって、安楽死を勧めた獣医師の言葉と、わたしが「安楽死はしない」と言った時の悲しそうな表情の意味が理解できます。

2年3ヵ月の間は、お世話だけでなく治療費の工面にも翻弄されました。1年が過ぎた頃、精神的にも金銭的にも限界に達し、自分だけでは抱えきれず不眠に。

もともと一人で抱え込む気質で、それが一つの要因になりうつ病で苦しんだ時期があります。幼稚園児のときはピアノ教師から体罰を受けていたことを親に言えず、夜驚症になって発覚、ということもありました。

ただ今回は、「この状態が続くとうつ病再発もあり得る。それだけは避けたい」と意を決し公私ともに尊敬する建築家に相談。すると偶然が重なって、その方の元、リモートで仕事をさせていただくことになりました。

なおみは病気と空腹でふらふらになりながらも、人を信じて助けを求め、安住の地にたどり着き、猫生を全うすることができました。でもこれが人馴れしていない野良猫であれば野垂れ死です。

「助けて」を言わなくてはいけない。そう強く思わせて行動に導いてくれた、これは「なおみの恩返し」と思えるようになってきました。

それから少しずつ自己開示ができるようになり、noteまで始めたので、占い師さんに「この猫は福猫です。」ときっぱり言い切られたのは、このことだったのかもしれません。

なおみが亡くなる1ヶ月前には、推定17歳の先住猫との別れがありました。

なおみのケアに手がかかり、先住猫たちのお世話が満足にできなくて申し訳なく思っていたなかでの突然死でした。

十分に悲しむ間もなく、なおみを見送り、5ヶ月たってやっと2匹の死を受け入れられるようになり、記事を書くことができました。

なおみのことを気にしてくださった方々、どうもありがとうございました。わたしの中で、なおみはずっと生きています。



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