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日本の協働ロボットの実状

最近、協働ロボットという言葉を耳にする機会も多くなってきたように感じる。

協働ロボットとは、産業用ロボットの中で、人と同じ空間で作業を行うことができるロボットである。

この協働ロボットの導入数は増加傾向にあるが、ニュースの内容と実態には少々乖離があるように感じる。


今までの産業用ロボットは、人と完全に別空間で使用されており、工場の一部に設置する場合は、柵などで囲う必要がある。

人と接触しないように設置しなければならない。

多関節ロボットだと、数十kgのアームがブンブン動いてるので、接触すれば怪我をするだろう。

一方、協働ロボットは、動作スピードも一般的な産業用ロボットより遅く、何かに接触した場合、停止するような設計になっている。

そのため、人が作業しているレーンの一部に柵無しで設置することが可能である。

今までの産業用ロボットと比べて、設置障壁が低いのと、コロナ禍の影響で導入数が増加しているのであろう。


しかし、日本では、このような導入がされていないパターンも多く見かける。

その理由の1つとして、日本の労働安全衛生規則が厳しいということが言われている。

労働安全衛生規則とは、労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省の省令である。

この労働安全衛生規則によって、協働ロボットも思うような導入が行われていないと聞く。

興味本位で購入してみたが、労働安全衛生規則を読むと厳しい条件が書かれていて、結局柵の中に設置するという話もあるそうだ。

これでは、今までの産業用ロボットと変わらない。

ましてや、動くスピードも遅く、価格も高いので、損をしているかもしれない。

導入は増えているものの、思うような使われ方がされていないということである。


ヨーロッパの方では、協働ロボットの導入率も高いし、日本とは違い、人と同じ空間で使われていることが多い。

協働ロボットの世界シェア1位を誇るユニバーサルロボットは、デンマークの企業である。

ヨーロッパは、日本と違い、安全に一定の考慮をしていれば良いよというスタンスなのかもしれない。

日本はどんなに対策を取っていても、人と接触すれば、ロボットを設置した方が責められるが、ヨーロッパでは警告した上でエリアに侵入し、接触したら侵入した人が責められると聞いたことがある。

風土の違いも、導入数の違いに影響しているのかもしれない。


労働安全衛生規則が厳しいということは、決して悪いことではないが、導入障壁が高くなることは確かだろう。

世間的には、ペッパー君のようなロボットと同様に考えているかもしれないが、サービスロボットと産業用ロボットは全く異なる。

1歩間違えれば労災にも繋がりかねない。

ならば、いっそのこと工場の完全自動化を目指すべきかもしれないが、コストや停止時の対応、従業員の今後など、課題がまだまだ存在する。

何か新しいものを導入するには、今までのものをいくつか切り捨てなければいけないのだろう。

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