とりあえずのポケットを満たしていく
この文章を打ち込んでいるのは、昼の12時41分。勤務している市役所のロビーでパソコンを開き、ようやくキーボードを叩き始めた。
昼休憩のルーティンは決まっている。お弁当を食べながら読書を20分、残りの40分でnoteを書く。もちろん、短時間では書き終わらないので、家に帰って仕上げることになる。とはいえ、すでにスタートを切っているため、オチまで書くのはそれほど難しくない。
しかし、今日はnoteのネタが浮かばない。ぼんやり考えていたら20分も過ぎてしまった。
そこで、とりあえずパソコンを起動させ、今までのnoteを振り返ってみることにした。私のnoteには、2つのパターンがあるようだ。
・新たな経験からの気づき
・過去の思い出からの気づき
「新たな経験」とは、人と会ったり本を読んだり、イベントに参加したりといったフレッシュな経験だ。そのときの刺激が、凝り固まった思考回路をときほぐし、新しい路をつくりだしたり古い路を封鎖したりする。一方通行だった思考回路の弁がポロリと外れて、逆流し始めることも。自分の思考が変容していくのを体感し、気づきへとつながっていく。
近藤康太郎さんの著書『宇宙一チャラい仕事論』(CCCメディアハウス)を読み終わったときなんて、遊びと仕事に対する思考回路が、すっかり形を変えてしまった。
一方、「過去の思い出」とは、なんとなく記憶のポケットに入れているようなもの。それらをnoteに書くときは、小さく折り畳まれた紙片をポケットから取り出し、少しずつ広げていくイメージ。当時の景色や心情が、一枚の絵のように目の前に広がる。改めて過去の経験を眺めながら、新たな気づきを得る。
「最近、新しいことしてないなぁ」と思うと、記憶のポケットから思い出をひとつ取り出してnoteに書く。昨日もそうだった。
でもこれって、貯金を切り崩しているようなものだ。さっきも、記憶のポケットを探ってみたけれど、「あれ?限りがあるぞ」と、気づいてしまった。
では、どうするか。
もちろん、「新しい経験」を増やしていく。何かを選ぶとき「いつもの私なら」と想像し、その逆を行く。思考回路が固まらないように……
ふだん会わない人と会う。
ふだん話さない人と話す。
ふだん行かない場所に行く。
ふだん読まない本を読む。
ふだん観ない映画を観る。
ふだん食べないものを食べる。
でももっと良いのは、ささいなことでも、「とりあえずのポケット」に入れていくことだと思う。心の温度や思考の動きに、いつも敏感でいる。心が温かくなったり冷たくなったり、頭の中で「?」が浮かんだりしたら、あまり深く考えずにとりあえずポイっと放り込む。
そういえば、東京の電車でのことも保存してある。
駅員さんが、目の不自由な女性の手を引き、優しく声をかけていた。ホームから電車内の座席まで誘導し、ゆっくり座らせた。向かいの席には、バックパックを背負った外国の人が座っていて、その様子を幸せそうに微笑みながら眺めていた。その外国の人の幸せそうな顔に、私の心もジワーっと温かくなった。
深く考えずに「とりあえずのポケット」に入れてある、ささいなこと。忘れないように、Notionというデジタルにも頼るのだけれど。
ポケットが空っぽにならないように、心の観察を怠らないようにしよう。というオチになる。
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