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労災保険

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 最近雨がしとしと降る日が多いですが、今日は快晴!
 NYの朝を思い出すような薄い青色の空です。
 

 さて、今日は、昨日の続きで、労災保険について簡単に説明します。

労災保険制度の目的

 私は成長が遅いのか、最近になって初めて分かることが多いのですが、「制度の目的」もその1つです。

 大学法学部時代には、なぜいつも法律には最初に「目的」が書かれているのか、理解できませんでした。それよりも、早く中身を教えておくれ、と思っていました。

 しかし、最近になってようやく、法律の目的を頭に入れておくことの大切さが分かってきたような気がします。

 法律の目的は、その法律が何のために誰の利益をどのように守ろうとしているのかを示したものです。ですから、目的を理解していれば、法律の細部を知らなくても、やっていることの良し悪しが感覚でわかってきます。

 だから、法律には、最初に目的に関する定めが置いてあるんですね。

 そこで、労災保険についての法律である労働者災害補償保険法(略して「労災保険法」)の目的を確認しておきますと、法律の第1条に以下の定めが置かれています。

第1条 労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進当該労働者及びその遺族の援護労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 この法律の目的は2つあることが規定されています。

 1つ目は、業務上の事由または通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡等に対して迅速・公正な保護をすることです。そのために必要な保険給付がなされることになっています。

 2つ目は、業務上の事由または通勤によって負傷し、または疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、それによって労働者の福祉の増進に寄与することです。そのために、社会復帰促進事業等がなされることになっています(2条の2)。

適用事業者

 労災保険は、全事業所が適用事業とされています。

 ただし、国の直営事業と官公署の事業については、労災保険法の適用はなく、一般職の国家公務員については国家公務員災害補償法、地方公務員については地方公務員災害補償法によります。

 原則として全事業が強制適用事業ですので、事業主は、保険関係の成立した事業開始の日から10日以内に、保険関係成立届を所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。

 保険関係成立届をしていない事業主のもとで労災事故が発生したとしても、保険給付はなされます。業務上・通勤中の労災に対して労働者に迅速・公正な保護を与えることが法律の目的だからです。

 この場合、事業主は政府から保険料の徴収をされますし、故意に届出をしていなかった場合には、保険給付にかかった費用の全額を徴収されることになります。故意に届出をしていない、というのは、保険関係成立届を提出するように行政機関から指導されたにもかかわらず、届出をしていないときのことです。

 行政機関からの指導を受けたことがなくても、保険関係成立日から1年が経過しても放置したままで届出をしていないときには、重大な過失があるものとして、保険給付にかかった費用の4割を徴収されることになります。

 もし、まだ届出をしていない場合には、早めに届出をしておく方が良いですね。

労災隠し

 労災事故が発生したとき、事業主は、現場の状況や被災状況などを「労働者死傷病報告」によって、所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。

【労働安全衛生規則】
(労働者死傷病報告)
第97条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 事業主が、労災事故の発生を隠すために、この報告書を提出せず、または、虚偽の内容で提出したりした場合には、この規定に違反したことになり、50万円以下の罰金に処せられます(労働安全衛生法第120条)。

 建設現場の労災事故を「下請業者の労災事故」として届け出ることも、労災隠しに該当します。

 どのような事情があるとしても、労災隠しをすると後々トラブルにまきこまれ、工事の受注を受けられなくなる事実上の制裁も受けることになりますので、絶対にしないようにしましょう。


 

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